７「そのままでいてくれ」 ページ7
ジェノと付き合って変わったことがいくつかある。
第一に今までどうってことなかった女子の視線が鋭くなり、普通に会話していたクラスメイトの男子たちが私が用があって話しかけると、途端にどこかへ散ってしまう。
「お前も大変だなぁ〜」
何かあったら相談しろよ、と言っていた割にはなんと適当な返しだこと。
私はカフェテリアでヘチャンにジュースを奢る代わりに最近の出来事を話していた。幼馴染であり、何だかんだ私のことをよくわかってくれている。まぁ話はちゃんと聞いているし。
「別にクラスで１人になるのはいいんだけどね」
「けど？」
「何が良いんだろ、私の。私がジェノと釣り合ってるわけないしさ〜」
するとヘチャンはストローの先を噛みながら神妙な顔をした。
こいつはすぐ顔に出る。だからきっと今も何か考えているのだろう。
「俺、わかんねぇけどさぁ。あんだけ彼女作らなかったジェノが自分から告白してきたくらいだから
なんか、こう、グッとくるものがあったんだよ」
「グッと？」
「そう」
男子の思考は分からない。だから頭から爪先まで平凡な私のどこにグッときたのかは見当もつかないが、そういうことなんだろうか。
ジェノは蝶みたいに可愛くて華やかな子より、こんな私にグッときたのか。ますます彼と言う人間がわからなくなる。
「まぁいいじゃん？あんなイケメンと付き合えてよ」
「さ〜。いいんだか悪いんだか」
「現状はそうかもだな」
ジュースを飲み終えたのか、ヘチャンは立ち上がって私の頭をくしゃりと撫でた。これはヘチャンの癖。いつからか事あるごとに私の頭を撫でるようになった。テストで良い点とったとき、帰り際別れるとき、等々。せっかく朝時間があったから丁寧にセットしたのに！という言葉は通じない。
「また話聞くからさ」
「うん」
「次はメシな」
「それも私のおごり？」
「あったりまえじゃん」
飄々とした幼馴染の笑顔が変わっていく日常の中で唯一不変的なものだった。
８「隠しておきたいこともあるだろう？」→←６「いつくしむ」ジェノ
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作者名：My candy boy | 作成日時：2017年10月21日 0時
