3「蜘蛛の糸」幼馴染・ヘチャン ページ3
Aがジェノと付き合ったということはすぐに耳に入って来た。
サッカー部のエースで教師の信頼も厚く、何より超がつくイケメンであるジェノが、散々告白を断ってきたあのジェノが、自分から告白して付き合った。その話題性はこの学校に通う人間にとって、流行のアイドルの熱愛と同等のものだった。
「ちょっとA、聞いてないんだけど！」
朝、いつも通りにAが学校へ来るなりクラスの女子たちが一斉にその周りを取り囲んだ。
もちろんバレていないと思っていたのだろう。Aは目を丸くして、あたふたとしている。
白い肌、清純な黒髪に大きな瞳。本人は気がついていないが、それなりにきちんとしていればAはそこらの美少女にもひけをとらないくらい綺麗だ。
この事実を俺だけがわかっていると思っていたのに、それはどうやら違ったようだ。
「ちゃんと詳しく聞かせてよー？」
「あー、また今度ね」
予鈴が鳴ってやっと解放されたAは、気だるそうな顔をして席についた。
カバンをかけ、いつも通りの表情に戻り(こやつは人前では表情を変える)前を向いた。
そんな真面目な背中をシャーペンでつつく。
「朝から大変だったな」
「まーね」
小学校の頃、学年で１番モテてた男子が隠していた好きな相手はAだったし、中学の頃皆の憧れの先輩の告白をあっけなくフッたのもAだ。
いつも「私は平凡だ」と言うが、本当のところ全く平凡ではない。
俺の中ではどんなに可愛いともてはやされるアイドルよりも、Aの方がずっと綺麗に見えた。
だからこそ。
「よっ」
「久しぶりだね、ヘチャン」
放課後、テニス部の部室の前に目当ての人物はいた。他のサッカー部は汗のにおいしかしないが(俺もだけど)なぜかジェノだけは常に爽やかで、今なんてシトラスのかおりがどことなく漂ってくる。こういうところが女子に「他の男子とジェノ君は違う」と言わせる所以か。
まぁ、そんなことは今どうでもよくて。
「Aと付き合ったんだって？」
「もう知ってるんだ」
「あいつとは幼馴染だからね」
【幼馴染】
そのワードを放った途端、少し目の奥がギラつかせた。ほら、エサにかかった。
(To be continued)
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作者名：My candy boy | 作成日時：2017年10月21日 0時
