泡沫の恋【Tadayoshi Ohkura】 (ページ36)

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【３６】ページ36

「…なんで？」

「会いたなってん。」

「…ゆっくりしなって言ったじゃん。」

「うん。でも、俺、体に悪いこと好きやから。」

宅配便だと思ってドアを開けた先にはモッズコートを着た1週間ぶりの大倉くん。

驚きすぎて、酔いなんてスッカリどこかに飛んでいった。

寒い中、ここまで来てくれたこと、
疲れてるはずなのに、会いたくなったって言ってくれたことが嬉しくて…

一瞬で頭も心も全部大倉くんだけになる。

本当、スゴイ人。
人を虜にさせる何かを携えてる。

「今から、ツーリングでも行こうや。」

「え？」

「クリスマスシーズンやから、夜景、綺麗やで？」

「でも…」

「ホンマ、でも。って言うの好きやな。
せっかくここまで来たのに追い返すん？」

「それは…」

「ヘルメット被ったらバレへんから、
唯一自由に外出れる手段やねんで。」

キラキラした笑顔で腕を掴まれて、
拒めるオンナがこの世にいる？

少なくとも私は無理…

「ちょっと待ってて。」

「おん。そーこなくっちゃ。」

だって、私は彼の虜だから。

．

．

分厚いコートだけ羽織って大倉くんと外に出る
１２月の夜にもなると、風がキンキンに冷たい。

手をさすりながら歩いてると

「寒そうやな…マフラー貸したるわ」

そう言ってマフラーを首にかけてくれた。

「ありがとう…」

グルグルとマフラーを首に巻くと
自然と大倉くんから香る香水の匂いがして
ドキドキが止まらなくなる。

マンションの前に置かれた自慢(らしい)の青と黒のバイク。

バイクのことはよく分からないけど、

「カッコイイね。」って言ったら凄く嬉しそうな顔をしてた。