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【32】 ページ32

ポツンと俺だけになった、Aの匂いがする部屋をグルリと一回見渡して、

手渡された鍵に視線を落とす。


なんでやろ、鍵を渡されただけで顔が綻ぶ。


「クゥーン」

足元に擦り寄ってくるユキを抱き抱え、


「Aもユキみたいに擦り寄ってきてくれたらええのになあ。」


前足に手を入れて顔の前までユキを上げて、
鼻をくっつける。


「クゥーン?」


不思議そーに俺を見つめる。
カワイイは正義やな…。

癒されるわ。


鼻から離して腕に収めて頭を優しく撫でる。


.


「なんか、ずっと距離があんねんな。」

「俺からこんなに詰め寄ってんのに…」

「すぐ逃げられるんやけど…」

「お前の飼い主さんは、どう攻略したらええんや…?」


ユキちゃーん。と、甘えた声を出しても、
撫でられてるのが気持ちいいのか、フニャンと目を閉じるだけ。


「教えてえや。ユキだけが頼りなんよ?」


抱きしめながらゴロンっとベッドに寝そべると
ふわっと香るAの薫りに酔いそうになる。

俺を慰めるかのようにペロペロと頰を舐めるユキ。懐いてくれるんは、嬉しいケド…本当に懐いて欲しいのはキミの飼い主さんの方やねんなあ…。



「また、来るからなあ。」


頭を撫でて、床にそっと下ろして立ち上がる。


洗濯してくれていた服に腕を通すと、
Aの匂いがして、はぁ…と深いため息がでる。

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作者名:Ma | 作成日時:2017年11月15日 14時

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