泡沫の恋【Tadayoshi Ohkura】 (ページ17)

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【１７】（11/23更新）ページ17

「ホンマ、連絡先教えてくれへんから
なかなか会えんかったやん。
今日も折角行ったのに休憩してるとか…」

なんなん？とワザと怒ったような顔をする。

その言い方が可愛くて、
思わず笑いそうになるけど、
なんとか抑えて

「…ごめんなさい」

そう謝る。

「ん～～、まあ、ええよ。
その代わりスマホを出しなさい！」

「え？笑」

「ホラ、早う！」

木目調のテーブルを手でトントン叩いて
焦らそうとしてくる。

それがなんだか子供みたいで、面白くて、
クスクス笑いながらカバンの中から
スマホを取り出す。

「ん。今日は素直でよろしい。」

QRコードが開かれたスマホの画面が
私の前に置かれる。

これは、、、
もしかしたら、パンドラの箱のようなものなのかもしれない。

それは分かってるけど、
私の手は勝手に動く。

．

ディスプレイの中に
"たつ"という文字が映し出された瞬間、

最新技術で薄く軽くなった筈のスマホが
ズシンっと重くなった気がした。

．

「イヌ、飼ってるの？」

「ん？あー」

綺麗な毛並みの大型犬。
イヌをトプ画にしたりするんだ…
カワイイ…

でも、んー…と曖昧に笑いながら、
私の前に置いてあるスマホに手を伸ばす。

「数年前に、亡くなったんやけどなぁ。」

「…え？ウソ…ごめ、ん…」

「ええよ、ええよ。
年寄りやったからしゃーないねん。

子供ん時からずっと一緒やったから、
寂しかったんやけどね。」

寂しそうに、
懐かしそうに笑う。

「写真、見る？」

「…うん。」

明らかに申し訳ないことを聞いてしまった…
っていう顔をする私に気を遣ってくれたのか定かではないけど、そう言って、
スマホの画面を嬉しそうに見せてくれる。