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「なあ、待てって!!」


お店から出て、早歩きで駅まで向かってると、
知ってる声に呼び止められる。

チラッと振り向くとコートも着ないで
必死な顔をしたヨコ…


「ついてこないで!」


叫ぶようにそう言って、
さっきよりも歩くスピードを速めたつもりなのに、


グイッと腕を掴まれる。


「離して!!」

「いやや」

「うざい!」

「ハイハイ。うざくてええから。」


困ったちゃんやな。そう言って
私よりもひとまわりくらい大きいカラダで
私を抱きしめる。


「今日、2回目…」

「あー、せやなあ。」

「一回1万だから…。」

「たっか!まあ、ええわ。抱き心地はええから。」

「、、、なにそれ」


ふふっと笑われたと思ったら、
なだめるように背中をポンポン撫でられる。


「泣きたかったら泣いてええよ?」

「、、、ムカつく。」

「ん。ムカついとけ。」


ギューときつく抱きしめられて、
思わず、涙を溢す。

ムカつくから、
高そうなヨコのスーツに思う存分
涙でも鼻水でもつけてやる…

そんな風に強がりながらも甘える。

微かに香るタバコの匂いが
少し鼻に付くけど、安心する。

なんとなく、私もヨコの腰に腕を回してギューと抱きしめる。


.


「ありがと…ヨコ。」

「ん。えーよ。惚れた弱みや。」

「、、、は?」


今、なんて…?


「お前、鈍感過ぎるわ。」


抱きしめられてた腕が解かれて、
下を向いてた顔が綺麗な手で掬われる。


「大学ん時から、一途、なんやけど。」

眉毛を下げて困ったように笑いながら
親指で涙を優しく拭ってくれる。

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作者名:Ma | 作成日時:2017年12月12日 19時

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