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「亮…。」
．
恐る恐る振り向いて、彼と目が合うと
時が止まる。
懐かしい目。
懐かしい鼻。
懐かしい口。
全てに釘付けになって、
周りがすべてシャットダウンされる。
．
見つめ合うだけ。
ただそれだけ。
歩み寄ったり、声を発したり、互いにしない。
．
いくら時が経ったって、
変わらないんだ。
この気持ちは。
4年前に無理矢理押し込んだ
好きという感情は、
一瞬で巻き戻される。
．
ふたりの間に流れる沈黙は
「キャ…」
「久しぶり、やな！亮！元気やった？」
何故か私を抱きしめたヨコによって途切れる。
．
「よこ、やまくん……。
ひさしぶり…。」
私の視界は真っ暗で、
背中越しにリョウの声が聞こえる。
少し掠れた、ハスキーな声
胸が痺れるような、声。
なんでだろう、
聞くだけで涙がでそう……。
．
「会わん内に男前に磨きがかかったな！
多分亮も同じテーブルやから一緒に行こう。」
「それは、横山くんの方やろ？笑
…あぁ。でも、ごめん。先に新郎んとこに挨拶行こうと思ってるんよ。」
「そおか。じゃあ、俺とAは先会場にい入っとくな。」
「A……か。
じゃ、後で……」
「おん。」
カツカツと、靴の音が遠くなるのだけ聞こえる。
顔を上げて、リョウを呼び止めたくても、
涙が滲んだ顔なんて、見せられないから
ヨコの胸元に押し付ける。
．
「ど、ゆうつもり？」
「ん？」
しばらくして、グーっと胸板を押して
顔をはなす。
「なにがしたいの？」
「…べつに。」
「…沢尻エリカか！」
「ククッ。ジョーダン言えるくらい元気なん？」
「…ムカつく。今日のヨコ、ムカつく。」
「はいはい。勝手にムカついとけ」
興奮気味の私をなだめるように頭を撫でて
スッとバーバリーのハンカチを渡してくる
「いつの間にそんな紳士になったわけ？…調子狂う…。」
有り難く受け取って瞳に滲んだ涙を拭き取る
「は？出会った時から紳士やろ？」
「よく言うわ…ヨコなんて、リバウンドしたらいいのに！」
「はあ？なんやねんそれ。笑」
「…なんでもないっ！」
調子狂うからに決まってんじゃん…。
いつの間にそんなオトコになってるの？
食い意地だけ張ってた学生時代に戻ってよ。
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作者名：Ma
| 作成日時：2017年12月12日 19時
