サディスト的恋愛方程式〔黄〕 (ページ19)

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ep.19 ページ19

「ちょっと、A倉庫行ってくるから、
それまでに統計終わらせておいてくれる？」

「あ、はい。分かりました。」

ニコッと笑って
不慣れそうにカチカチパソコンを
打つ後輩ちゃん。

そのネイルは、パソコン打ちにくくないのかな…。
まあ、何も言わないけど…。

よろしくね。
とだけ言って１つ下の階にある
倉庫に向かう。

社則って訳ではないけど、
エレベーターは節電のためにあまり使うな
って言われているから、

いい運動になるし、階段で下まで降りてると、

「佐藤！」

名前を呼ばれて、
振り向く

「あ、先輩。どうしたんですか？」

慌てて階段を駆け下りた
先輩は、少し息を切らしてた。

「いや、あの…、錦戸さんと、
結婚するって、ホンマ？」

「え、あぁ、はい。」

多分。と、心の中で
また付け加える

「…錦戸さんと会ったのって、
あの日がはじめてじゃ、ないん？」

…どう答えるのが正解？
あの日が初めて会った日なのに、
もう婚約ってオカシイ、よね。

と言っても、
嘘ついたって、どうせボロは出てくるろうし…

「ごめん…言いたくない事やったら言わんでもええよ。」

…そういうことじゃないけど、
その返しは今の私には好都合で、

「…すいません。」

曖昧に笑って
その場を取り繋ぐ。

「…おめでとう。
上司として、お祝い、するわ。」

肩をポンと優しく叩いて、
スッと私の隣りを通り過ぎる

「あり、がとうございます。
先輩も、おめでとうございます。
部下として、お祝いします。」

ずっと言えなかったことが、
やっと言えた。

「ん。」

背中を向けて、
片手をあげてる先輩

ちょこっと、古いな。
と思ったけど、

カッコいいと思った。
もちろん、部下、として。