検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:22,204 hit

壱 雪の庭 ページ1

生まれたときから、少女は体が弱く、長くは生きられないと言われていた。それは今も昔も変わらず、呼吸をするのすら苦しい日々を過ごしている。
そんな身体のため、外に出るのもままならず、友人と呼べる人は1人もいない。両親も、少女が物心ついた頃には亡くなってしまっている。
障子の隙間から僅かに覗いた、白銀の景色。葉を脱いだ梢が白い衣を羽織り、庭一面に柔らかな純白の布団が敷かれている。狐でも通ったのか、所々に動物の足跡が残されている。
亡き両親がこの場にいたら、身体が冷えるからと締め切られてしまう襖だけれど、誰もいない時にこっそりと外の景色を眺めている。特にこの時期は、綺麗な雪が見れるときだから。
今は見慣れてしまった部屋の天井。けれど何故か、彼女の隣にはいつも誰かがいた気がする。それが誰なのかなんて、思い出せないのに。
時々、少女は不思議な夢を見る。父でも母でもない知らないはずの誰かが、少女に話しかけてくれる夢。けれど目を覚ましたら、そこには誰もいない。現実というには寂しくて、夢というには眩しい。

「お嬢様、これ以上はお体に触ります。そろそろお休みください」

使用人の方に声をかけられ、少女は開いたままの障子に手をかけてソッと閉じ、使用人の方に軽く会釈をして、今日もありがとうございました、と声をかける。
使用人の方は、仕事ですから、と襖を閉じて何処かへ行ってしまった。
1人残された部屋で、少女は身を起こし、障子の向こうに足を踏み入れる。部屋よりもヒンヤリとしているけれど、その感覚が、少女に生きているんだよ、と知らせてくれる。
日はすっかり沈み、夜の海のように吸い込まれそうな黒が広がる中で、青白い月が浮かんでいる。その周りに、金平糖のような輝石のカケラが散りばめられている。
夏の頃には、この空に花火が上がるそうだが、少女は見たことがなかった。ただ部屋の中で、ドォンと響く音に耳を傾けるだけ。それでも、少女にとっては趣のあるものになっていた。

「こほっこほっ……」

これ以上は身体に良くないと、少女は部屋に戻り、障子を閉じて布団に入る。
少女がこんなことをし始めたのは、あの不思議な夢を身始めた頃だ。こんなところで寝ていてはいけない。あの人を探さないといけないんだと、少女は隙を見ては縁側に足を運ぶ。
そろそろ眠りにつこうと瞼を閉じた時、障子の向こうから人影が見えた。足音1つしない、青年のようなシルエットの誰かが。

弐 至福な会話→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (58 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
24人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 猗窩座 , 恋雪
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

squid(プロフ) - ルナさん» 返信が遅れた申し訳ありません!狛恋は本当に切ないなと思います!ワニ先生がワニ過ぎて、頼むから幸せになってくれと漫画読みながら号泣しました。こちらこそ、完読していただきありがとうございます!アカザさんの小説が増えますように! (2020年4月9日 14時) (レス) id: 40b9242022 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - 狛恋推しなのでめっちゃ嬉しい……。頑張って狛恋夢小説探してよかった(TT)、猗窩座で検索かけてもほとんどヒットしないのほんと悲しい……。ありがとうございましたm(_ _)m (2019年10月20日 22時) (レス) id: fad89075ae (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 窩座女_参さん» コメントありがとうございます!猗窩座と恋雪さんは幸せになってほしかった……という下心から書いたのですが、そのように感想をいただけて嬉しいです!完読ありがとうございます! (2019年7月24日 8時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
窩座女_参(プロフ) - えっ、めっちゃ好きです、、(´TωT`。猗窩座オチの小説が少なすぎるので恋雪が出ていて最高でしたし、、。素晴らしい神小説ありがとうございます、、(´;ω;` (2019年7月24日 8時) (レス) id: e12b8d56e4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:squid | 作成日時:2019年6月14日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。