【鬼滅の刃】堕ちた桜のように

外伝 炎の宴 ページ43

その日、煉獄家は賑やかだった。いつも賑やかなのだが、今回はいつもの比ではなかった。
A Aと、煉獄 杏寿郎の結婚式が、正式に執り行われた。本来は身内だけでやろうという話だったのだが、何故か、炭治郎を含む鬼殺隊のメンバーと、柱の姿がそこにはあった。
炭治郎たちはまだいいとして、なぜ柱まで来てるんだ。そこまで暇じゃないでしょ。

「煉獄が式をあげるって聞いたからな。ド派手に任務を終わらせてきたんだ」

ド派手の意味を調べてこい。
蟲柱のしのぶさん(杏寿郎の暴走を唯一止められる人なのでそう呼んでいる)の話によると、柱１人１人の任務を協力して遂行したという。つまり、本来ならば柱１人で済む任務を、柱数人がかりで早急に終わらせたということ。鬼側にすればたまったものではないだろう。

「煉獄さんなんて、今までで一番荒れ狂っていましたから、少し眠ってもらうことになりましたが」

聞いてはならないことを聞いた気がする。いらぬ好奇心は時に人を殺すので、何も聞かないでおく。
触らぬ神に祟りなし。私は何も聞いてません。
式は特に問題なく進んだ。強いて言うなら、式が始まって早々、杏寿郎にいきなりキスをされ花嫁がダウンをするというハプニングがあった程度だ。
公共の場ですることじゃないよね、ということでしのびさんに沈められていた。ナイスです。

宴は夜が明けるまで続き、合間合間に任務に向かうというなかなか騒がしい式となった。
式に来てくれた面々に、私はこれまでのことを回想して、成長したなとしみじみ思う。もう、あの雨の日に泣いていた、無力な私はいない。

「杏寿郎」

宴がひと段落つき、杏寿郎と別室で休憩しているとき、さりげなく聞いてみた。

「杏寿郎は……どんな女性が好き？」
「俺はAが好きだ！」
「うん、知ってた」

予想通りの返答に、苦笑いしか浮かばない。真っ直ぐな貴方が、なぜ私を好きなったのか、未だに分からないけれど、そんな訳の分からない貴方に惚れた私も私だ。

「……ほんと、バカねぇ」

私を好きになった貴方も、そんな貴方を好きになった私も。真っ直ぐで、周りに影響を及ぼすほど熱い。

『胸を張れ！そうしていつか、自分の価値を見出し前に進め！それまでは、俺がAを守る！』

嗚呼、そうか。私の価値は、もうあったんだ。悩む必要なんて無い。
千寿郎、お義父様、お義母様、父さん、そして貴方が、私に価値を与えてくれたから。

「好きだよ」

今も昔も、これからも。

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