卅参 紅蓮に染まれ ページ33
私が狙ったのは、猗窩座の頸ではない。最初から、単純な囮などで勝てるとは思ってない。
ならば、思い込みをさせる。相手はきっと、こういう動きをするだろうと。だからそれまでは、私が囮になる。
もちろん、急に戦い方を変えたからと言って、生じる隙は、ほんの１秒にも満たない刹那の時。
それでいい。
狙うのは、鬼の頸じゃない。斬っても斬っても意味のない部位……手足が、私の本当の狙いだ。
「いけえぇぇ！」
【肆ノ型・改 下段盛炎のうねり】
「なっ……！」
燃え盛る炎のように、風に揺れる炎のように鋭く、速く、鬼の手足を斬る。
手足を斬られるとは思わなかったのだろう、鬼は拍子抜けしたように、手足を再生させる。
再生させるのに有する時間は、３秒もかからない。
別にいい。その隙があるのなら。
「杏寿郎！」
「オオオォォ！！」
私の隣から、電光石火の如く飛び出た杏寿郎は、紅蓮に煌めく刀を頭上にかざし、炎を纏わせる。それは、炎の龍のように。
【炎の呼吸 壱ノ型 不知火】
手足のない鬼は、躱せない。空中で動きが止まったままの鬼に、杏寿郎の炎刀が振り下ろされる。
その刃が届く、ほんの０.１秒ほど前に、鬼の手足が生えた。型を出す寸前の杏寿郎は、無防備だ。そんな状態の杏寿郎に、鬼の手が伸びる。
人間を殺すには充分な凶器が、杏寿郎を襲う。
「しまっ……」
防御の体制に入るも、間に合わない。
私のせいだ。鬼の再生速度を見誤った、私のせい。
また失うの？大切な人を。
『俺はAが好きだ！』
守るなんて、馬鹿らしい行為だと思ってた。自分の身が危ないときに、他人の心配をするなんて、愚か者のすることだと。
今ならわかる。愚か者は私だったんだ。守るという行為は、やろうと思えばできるものじゃない。守りたいものは、身体が勝手に動いてでも守ろうとするんだと。それほどまでに、大切なものだから。
杏寿郎を突き飛ばすように、私は突進する。泣きそうな顔で、こちらに手を伸ばす杏寿郎に、私は満面の笑みを向けてやる。
「……ごめんね、杏寿郎」
私の視界は、炎よりも濃い赤に染まった。
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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます！更新頑張ります！ (2019年5月2日 6時) (
レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます！続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます！こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです！この小説を書けて良かった……！ (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです！何度も読み返したくなる夢小説は久々です！ありがとうございました！ (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます！読み返していただけるなんて光栄です！ご期待に添えられるよう頑張ります！ (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：squid | 作成日時：2019年3月31日 19時
