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廿捌 いつものように ページ28

形は良くても、失敗に終わったおにぎり。ご飯を炊いたときも、千寿郎に手伝ってもらった。
自力で作ったとは言い難い、胡椒おにぎり。

「Aが作ったのか?」
「はい!兄上のためにとずっと練習されていたんですよ」

やめて千寿郎!
コイツには知られたくなかったことをアッサリとバラされてしまい、私は言葉を失う。だが、千寿郎の瞳に濁りはない。むしろ眩しい。
急激にハードルが上がった気がする。
杏寿郎が意外そうに私を見ると、おにぎりを懐にしまってしまう。

「まっ……それ!」
「ん?Aが俺のために作ってくれたんだろう?」

何かまずかったか?と首をかしげる杏寿郎だが、おにぎりを返す気は全くないらしい。
そうだけど!そうだけども!

「それ、失敗して……」
「Aが俺のために作ってくれたものは何でもうまい!」
「〜〜っ!」

慣れたつもりでいたが、やはりまだまだだった。こんなことで頬を緩める私が許せない。真っ直ぐにこちらを見つめる杏寿郎に何も言えない自分が、情けない。

「……ちゃんと食べてよ」
「うむ!」

嬉しそうに笑う杏寿郎に、どうでもいい気持ちになる。実際、失敗はしたけれども、杏寿郎に私が作ったご飯を食べてもらいたかったから。
ああ、私も弱いなぁ。

「いってらっしゃい、杏寿郎」
「行って来る!」

私より先に家を出る杏寿郎の背を、千寿郎とお義父様3人で見送ってから、私も任務へと向かった。
鎹鴉は相変わらず、賑やかだった。稲を好んで食べるし、鬼は夜にならないと出てこないし。いつも通りの任務だった。なのに、胸騒ぎがする。

「確か……杏寿郎もこの辺りで任務に当たっているのよね」

任務が終わっても、その胸騒ぎは治らない。むしろ増すばかり。嫌な予感しかしなかった。
こういう勘は、よく当たる。鬼殺隊には、5感の内いずれかが優れている者が多いが、中にはどれにも当てはまらない、言うならば第6感のようなものが鋭い者もいる。

『行って来る!』

アイツの声が、笑顔が、脳内に響いて消えた。
ダメだ。嫌な予感がする。今すぐにでも、杏寿郎に会いたい。何も悪いことなんてないんだと、あの眩しい笑顔を見たい。

「鎹鴉!お願い、私を杏寿郎のところまで連れて行って!」

大丈夫だと思いたい。アイツは強い、誰よりも。でも、父さんもそうだった。父さんも強かった。なのに呆気なく死んでしまった。
考えるよりも先に、体が動いていた。

廿玖 爆弾飯→←廿漆 料理



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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時

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