廿陸 人と鬼 ページ26
季節は巡る。けれどそこには、決して同じ季節はない。同じ桜が咲こうとも、昨年見た、地面に堕ちた桜とは違う。
私は、そんな桜が苦手だった。地に堕ちた桜が、あんなにも美しく咲いていた桜が、散る時はほんの一瞬の出来事なのだと。人も同じく、どんなに美しく生きようと、死ぬ時はほんの一瞬なのだと。
「鬼を連れた子供?」
家族で夕食をとっている最中、杏寿郎から興味深い話が聞けた。あまりに信じがたい内容で、思わず聞き返してしまったが、お義父様と千寿郎も興味津々だ。
「竈門 炭治郎という少年だが、見所がある!度胸もいい!鬼は禰豆子と言ったか……2年間人を襲ったことがないとのことだ!」
杏寿郎がここまで言うとは、なかなか珍しい。その子供の将来が気になる……が、それ以上に禰豆子という鬼の子供も気になる。
今まで数えきれないほど鬼を葬ってきたが、どの鬼も殺意と狂気しか感じられない。
鬼と人が共に闘っている。そしかしたらその少年なら、叶えてくれるかもしれない。亡き父が望んでいた、人と鬼が手を取り合える世界を。
「……浮気か?」
ずいっとこちらに身を乗り出す杏寿郎。恐らく、私が竈門 炭治郎という少年のことを考えているとでも思ったのだろう。何故そうなる。
「浮気も何も……私が好きなのはアンタだし」
「ゴフッ」
余裕のない様子の杏寿郎を茶化してやれば、お義父様が飲んでいた茶を吹き出し、千寿郎は咳き込み出した。ごめん、悪意はあった。ターゲットの杏寿郎はというと、真顔である。
いや、何か言ってくれない?照れるとか……何かあるでしょ?
「あー……そこの2人、睦み合うのはやめなさい」
咳払いをして咎めるように言うお義父様。すみません、全くもってイチャついてないです。いや、私ばかりが攻めれるのは嫌だから、少しくらいからかってやろうとは思ったけども……。
「杏寿郎、帰ってこい」
未だに真顔で固まっている杏寿郎。眉がピクリとも動かないどころか、瞬きもしていない。
え、大丈夫?
「最近は、義姉上が甘えてくれないと悲しんでおられたので、嬉しかったんだと思います。放心してますね」
そんなことで放心して大丈夫か杏寿郎。まぁ、だいたいこういうことをした後は倍返しされるので程々にしておく。翌朝に立てなくなって任務に行けないとか、話にならないからね。
「A、一瞬に風呂に入ろう!」
「殺す気か?」
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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時