廿参 不安 ページ23
「いい湯だ！」
「ソウデスネー」
耐えきれぬ羞恥心で、顔を両手で覆う。杏寿郎はと言うと、何事もなかったかのように、私を膝の上に座らせ、普通に風呂に入っている。性別って言葉を知ってるか？
「もう、お嫁にいけない……」
「Aは俺の嫁だろう？」
そうだけど……そんなんだけど……！
杏寿郎は良くも悪くも鈍い。おかげでこの１年、ちょっとやそっとじゃ心が折れなくなった……わけではないが、メソメソする時間が短くなった。全くもって嬉しくない。
「A、子供は何人ほしい？」
「話の順番ってもんがあんでしょ」
こういう発言には慣れた。いや、杏寿郎に疚しい気持ちとかそんなものはない。純粋に聞いているのだと思う。
いいよ、どうせ私の心は汚れてるのよ。煉獄家の許嫁というには非力で、単純で……唯一の取り柄は可愛げのない性格。
「杏寿郎は、私でいいの？」
気付けば、そんなことを呟いていた。
許嫁の壁が高すぎて、自分がみすぼらしく見える。情熱の薔薇の隣で咲く、少し固い雑草のようなものだ。どこにでもいる、雑魚。
「俺はAが好きだ」
顔は見えないけれど、そう言われる。昔も、そんなことを聞いた気がする。違う、そうじゃない。
「私はっ……アンタと釣り合わない」
もしも私以外の人が許嫁だったら、杏寿郎はその人を好きになったんじゃないの？
強くて凛々しい女性だったら、杏寿郎は私には目もくれなかったんじゃないよ？
「釣り合う合わないはそんなに重要か？俺はAに惚れた！それ以外にも何か必要か？惚れていなければ抱かない！」
「アンタって人は……」
もっと他に言葉があんでしょ！
言葉を詰まらせる私の頭を乱暴に撫でる杏寿郎は、顔を見ずとも分かる、笑っている。
「胸を張れ！そうしていつか、自分の価値を見出し前に進め！それまでは、俺がAを守る！」
忘れた頃に開く傷口を、杏寿郎はいつも縫い直してくれる。もしも杏寿郎がいなければ、私はもうダメになっていたかもしれない。
「うん、ありがとう」
技の１つがなんだ。１年で習得できないから何だ。私なら出来る。杏寿郎が出来ると言ってくれているのに、私が諦めるわけにいかない。
後ろから肩に回された手を掴み、首だけを後ろに回すと、杏寿郎の顔があった。背伸びするように、杏寿郎の口づけする。自分からするのも良いだろうと思った私が馬鹿だった。
「覚悟はいいな！」
「宣戦布告！？」
翌朝、私は全身筋肉痛に襲われた。
ちくしょう……！
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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます！更新頑張ります！ (2019年5月2日 6時) (
レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます！続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます！こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです！この小説を書けて良かった……！ (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです！何度も読み返したくなる夢小説は久々です！ありがとうございました！ (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます！読み返していただけるなんて光栄です！ご期待に添えられるよう頑張ります！ (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：squid | 作成日時：2019年3月31日 19時
