拾参 炎の刀 ページ13
藤のカーテンを抜け、最終選別は始まった。ルールは至って簡単。鬼の巣食う山で7日間生き延びるだけ。弱ければ死に強ければ生き残る。なんともシンプルだ。
「ここでしばらくは別行動ね」
「ん、なぜだ?」
私の言葉に首をかしげる杏寿郎。一緒に行動した方が生き残る可能性は増すが、はっきり言うと、杏寿郎といると彼に頼りきってしまう自覚がある。
ここは最終選別。私の今の実力を知るためにも、彼と行動はできない。なにより、いつまでも杏寿郎とはいられない。
「ここは最終選別よ?自分の身は自分で守れるわ」
「……俺よりも弱いだろ?」
「だまらっしゃい」
杏寿郎は正直だ。嘘は吐かないがお世辞も言わないという、良くも悪くも素直なやつだ。
毎回私のプライドをズタズタに引き裂くのは杏寿郎だ。認めたくはないが、杏寿郎は強い。私なんかよりも全然。
「……何かあったら俺を呼んでくれ」
「大丈夫よ、アンタの手は煩わせな……」
「呼べ」
珍しく強い口調の杏寿郎に、私は半端脅されるように首を縦に振った。普段はあまり怒らない分、怒らせると恐ろしい。想像するだけで鳥肌が立つ。
「……気を付けろ」
名残惜しそうに私に背を向けると、杏寿郎は森の奥へと消えた。その先から、鬼の断末魔が聞こえてきた。しかも、1匹ではない。
絶対にアイツは怒らせないようにしようと、私は再び心に強く誓った。
私は鼻がいいわけでも、耳がいいわけでもない。だがその分、気配には鋭い。森の奥からこちらに向けられる殺意が。
「グググ……」
最初に飛び出してきたのは、比較的人に近い形をした鬼だった。顔は石像のようにひび割れており、両目は飛び出たような状態で、見るのも悍ましい。鬼を見るのが初めての私でも、その異形さは充分理解できた。
我を忘れたように飛びかかってくる鬼のスピードは人間の比ではない。そこから繰り出させる攻撃も、一撃でも喰らえば致命傷になりうる。
だからと言って、誰も負けるとは言ってない。
【全集中 炎の呼吸】
息を吸い、刀に手を添えて構える。見るのは敵の急所。他は何もいらない。
爆ぜるように地面を蹴る。イメージしろ、稽古の時と同じように。斬るのは頚、それだけ。
爆風のように素早く間合いを詰め、刀を抜く。刀身を炎の渦が巻き、炎の刀の化した。
【壱ノ型 不知火】
真っ直ぐに、迷いなく鬼の頚を切り落とす。鬼の頭は宙を飛び、やがて跡形もなく消滅した。
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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時