占いツクール
検索窓
今日:47 hit、昨日:55 hit、合計:14,277 hit

早春の花が咲く頃 ページ24

竈門 炭治郎は1人、人里離れた山奥に足を進めた。
鬼を連れた鬼殺の剣士など、後にも先にも彼1人だろう。そして、禰豆子という鬼を人間に戻すため、彼は今も戦い続けている。

「あ、炭治郎くん」
「Aさん!?」

来てくれたんですか、と嬉しそうに頬を緩める女性は、誰かを呼びに、ある場所へと向かう。
一体何が起こっているのか分からなかったが、炭治郎もその後に続く。
彼らが辿り着いたのは、小さな広場だ。
中央には大きなミモザの木があり、その下で、燃えるような髪色をした偉丈夫が、木刀を手に素振りをしていた。

「杏寿郎。炭治郎くんたちが来てくれましたよ」
「む、溝口少年か!久しいな!」
「竈門です!なんで煉獄さんまで……!」

なぜ故人となった彼らがここにいるのか。
彼らは、本当は生きていたのか。そんなことはあるはずがない。
彼らはもう、1年以上前に亡くなっているのだ。

「また腕を上げたな、竈門少年!」

炭治郎の様子などお構いなしに、杏寿郎は快活に笑い、彼の肩を軽く叩いた。
杏寿郎のペースに乗せられてしまったら最後、彼に質問する権利はない。したとしても、杏寿郎は答えないだろう。
突然、稽古をしよう!と言い出した杏寿郎に、炭治郎は何を聞こうとしていたのかも忘れ、手渡された木刀を振るう。

「怪我はしないでくださいね」

ミモザの木にもたれ掛かる、鬼であったはずの彼女には、ツノがない。鋭い爪も牙も、どこにもない。
そこには、ただ美しい笑みを浮かべる少女がいた。
ミモザの花が風に揺れ、彼らの声を空高くまで届けようとサラサラと音を立てた。

「________い!」
「_____おい、起きろ!」

頭上から聞こえる声に、炭治郎は眼を覚ます。
そこには、2人の親友の姿に、ようやく、炭治郎は自身が居眠りをしていたことに気が付いた。

「……」

夢だったのか、と炭治郎が天を仰ぐ。
杏寿郎が死に、後を追うようにAも亡くなった。
生きろ。そう書かれた遺書を手に、Aは最期の時まで生きた。
炭治郎は、彼らが天国で出会うのを願った。
彼らが亡くなったのは、もう随分と昔。Aが亡くなったのは、ミモザの、早春の花が咲く頃だった。
今は、もう雪の降り始める頃。

「あれ……炭治郎、そんな木刀持ってたか?」
「え?」

善逸に指摘され、炭治郎は、自分が木刀を手にしていたことに気が付いた。
その木刀からは、優しいミモザの匂いがした。
雪の降り始める頃、ある場所の、ある木には、ミモザの花が咲いていた。

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)


←廿弐 迷い



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (38 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
48人がお気に入り
設定キーワード:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 鍔職人
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

squid(プロフ) - 愛羅さん» 返信が遅れてすみません!感動系は少々苦手なのですが、そのように思っていただけたなら幸いです!完読ありがとうございます! (7月1日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
愛羅(プロフ) - 感動しました!涙が止まりません…( ; ; ) (7月1日 0時) (レス) id: 83407bc1eb (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - ぶるこ。さん» コメントありがとうございます!素敵な夢だなんてとんでもないです。完読していただきありがとうございます。 (6月17日 7時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
ぶるこ。 - 涙ぼろぼろです。素敵な夢をありがとうございます…。 (6月17日 2時) (レス) id: 48aba5c9ee (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - キノさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。 (6月14日 15時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:squid | 作成日時:2019年5月11日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。