参 兄のよう ページ4
わたしは煉獄さんにより、家に送り届けられた。迷子にならないよう、手を握ってくれていて、両親はびっくり仰天していた。思わず吹き出してしまうくらいに。
「本当に、ありがとうございます……!」
突然家を飛び出したわたしを、両親はとても心配してくれていた。涙ぐみながら、何度も何度も、煉獄さんに頭を下げている。わたしも一緒に、煉獄さんに頭を下げると、煉獄さんは困ったように笑った。
「では、俺はこれで」
次は迷子になるなよ!とわたしの頭を撫でてくれる煉獄さんは、お兄さんみたいだった。けれど、わたしに背中を向けて立ち去ろうとする姿に、胸が締め付けられる。
いつの間にか、わたしは煉獄さんの袖を引っ張っていた。不思議そうな顔の煉獄さんと目が合い、わたしは何をしているんだろう、と頭が真っ白になる。
「あ、あの……!」
何でもいいから、言わないと。そうだ、どこに住んでいるのか聞いてみよう。いつか、わたしが鍔職人になって、煉獄さんの鍔を作れるようになったら、顔を出せるように。
「また、会えますか?」
混乱に混乱が重なり、出てきたのはその言葉。バカだ、とわたしは泣きそうになる。そうじゃない、そうじゃないでしょう、と。
困らせてしまっただろうかと、チラリと顔を上げると、煉獄さんが固まっていた。笑顔でも、怒りでもない、無だった。
何も言わない煉獄さんに、わたしは気持ち悪がられたのではないかと、不安に駆られたときだった。
「ああ!会える!」
変わらぬ様子で、はっきりとそう答えてくれた煉獄さんは、その場でしゃがみ込むと、わたしの頭を撫でてくれた。弟か妹でもいるのか、慣れたような手つきだった。
「A少女、これを借りてもいいか?」
煉獄さんの言うコレとは何か、最初は見当もつかなかったけれど、視線を追えば、それが何なのかわかった。コレとは、わたしの作った鍔……というより鉄の塊だった。
「君が俺の鍔を作りに来てくれるときまで、借りていてもいいか?」
信じてくれているんだ、この人は。わたしがいつか鍔職人になって、約束を果たしに来ると。
「……はい!必ず取りに行きます!」
それがいつになるのか何て、分からない。わたしが鍔職人になるのが先か、煉獄さんが鬼殺隊になるのが先か、そんなこと、誰も分からない。
でも……いや、だからこそ、わたしは今まで以上に鍔作りに専念した。朝も昼も、夜も変わらず、ただひたすらに、鍔を作り続けた。
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squid(プロフ) - 愛羅さん» 返信が遅れてすみません!感動系は少々苦手なのですが、そのように思っていただけたなら幸いです!完読ありがとうございます! (2019年7月1日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
愛羅(プロフ) - 感動しました!涙が止まりません…( ; ; ) (2019年7月1日 0時) (レス) id: 83407bc1eb (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - ぶるこ。さん» コメントありがとうございます!素敵な夢だなんてとんでもないです。完読していただきありがとうございます。 (2019年6月17日 7時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
ぶるこ。 - 涙ぼろぼろです。素敵な夢をありがとうございます…。 (2019年6月17日 2時) (レス) id: 48aba5c9ee (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - キノさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。 (2019年6月14日 15時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年5月11日 17時