廿壱 細胞 ページ22
気が付いた時には、わたしは両手を後ろで拘束されていた。鬼の狙いにいち早く気付いた杏寿郎も、不意を突かれたために、反応が遅れた。
「この娘が大事なのか?杏寿郎」
なんとか鬼の手から逃れようと暴れてみるも、やはりと言うべきか、ビクともしない。
「Aさん!」
炭治郎くんも、傷のせいで立てない。なのに、わたしを助けようと刀を握ろうとする。
痛いだろうに、苦しいだろうに、立ち上がろうとしてくれている。わたしなんかのために。
「鬼になれ、杏寿郎。見たところ、この娘は長くないだろう。鬼になれば、娘の病気は治る。お前もこの娘と永遠に生きられるぞ」
杏寿郎は、鬼にはならない。けれどほんの一瞬、1秒にも満たない時間だが、杏寿郎の瞳が揺れた。
わたしの病気が治る。生きられる。
けれど、杏寿郎は首を縦には振らない。
可能性にないわけではなかった。わたしが原因で、杏寿郎に危険が及ぶことを。
だから、決めていた。もしもわたしのせいで、杏寿郎の命が危うくなったそのときは。
わたしは舌を噛み切ろうと、顎に力を入れた。しかし、それは呆気なく阻まれてしまう。
「そう死に急ぐな」
わたしが噛んでいたのは、鬼の手だった。
舌を噛もうと口を開いた瞬間に、手を突っ込まれたらしい。気分が悪い。
「ん〜!」
鬼を睨みつけてやるも、わたしなど一瞥せず、鬼は杏寿郎に熱い視線を向けている。
同時に、口の中に何かが広がった。鉄臭い何かが、喉をすり抜け、体内へ流れ込んでくる。
これはダメだと、頭の中で警報が鳴り響く。今すぐに吐き出せと。
「……少し量が多すぎたか」
身体中に、激痛が走る。
身体の細胞が、全て作り変えられているような、わたし自身が消えてしまうような、不気味な感覚。
吐き出そうと咳をする。血痰が出ても、喉の奥がカラカラになってもやめない。
両手の拘束が解かれ、そのまま地面に蹲り、口を手で押さえる。
「A!」
誰かが呼んでくれている。
知っている声なのに、分からない。
喉が渇いて仕方がない。水が欲しい。いや、水ではこの渇きは潤わない。
目の前にいる誰かが、わたしに手を伸ばすのを最後に、わたしの理性は吹き飛んだ。
「適応したか」
最後に、そんな声が聞こえた気がする。
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squid(プロフ) - 愛羅さん» 返信が遅れてすみません!感動系は少々苦手なのですが、そのように思っていただけたなら幸いです!完読ありがとうございます! (2019年7月1日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
愛羅(プロフ) - 感動しました!涙が止まりません…( ; ; ) (2019年7月1日 0時) (レス) id: 83407bc1eb (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - ぶるこ。さん» コメントありがとうございます!素敵な夢だなんてとんでもないです。完読していただきありがとうございます。 (2019年6月17日 7時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
ぶるこ。 - 涙ぼろぼろです。素敵な夢をありがとうございます…。 (2019年6月17日 2時) (レス) id: 48aba5c9ee (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - キノさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。 (2019年6月14日 15時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年5月11日 17時