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外伝ノ陸 ページ29

目の前の男の顔が歪んだ。それと同時に、男は宙に浮いたかと思えば地面に落下。何があったのか、男の頬には拳の跡がついている。

「すまない、遅くなった」

見慣れた宍色に、Aは安堵のため息をつく。それとほぼ同時に腰に手を回されて、そのまま引き寄せられる。

「てめぇ、何しやが……!」

錆兎を睨みつけ、突進しながら鋭い拳を振るう男だが、次の瞬間には敢え無く突き飛ばされ、ヤケになって動きが単調になるも、やはり男の攻撃はカスリもしない。
錆兎がAを引き寄せたまま器用に躱している。その事実に、自尊心の高い男は苛立ちを見せるも、周囲からすれば弄ばれているようにしか見えない。

「Aに触るな」

男にしか聞こえないほどの小さな声で、錆兎は男に耳打ちすると、そのまま手刀を打ち込む。流石は鬼殺隊と言うべきか、自身よりも巨大な男を一撃で沈めてしまった。男は声を発することもなく気を失い、そのまま後ろへ倒れこむ。
大丈夫か、とAを支える錆兎だが、その目は僅かに殺意を帯びている。周囲の人間ですらゾッと背筋が凍るような、凍てついた空気。

「ごめんね、ちょっと身体が重くて」

笑って誤魔化そうとするAだったが、錆兎の無言の圧力に負けて渋々風邪気味であったことを白状し、錆兎はわざとらしくため息をつく。
言いたいことは山々であるが、自身の不甲斐なさのせいで恐ろしい思いをさせてしまったと、錆兎は言葉を呑み込んで、Aを連れてその場を後にした。

錆兎がAを連れて行ったのは、舶来品が多く並んだ、こじんまりとした店だった。客の出入りが少ないのか、そこには店長らしき人物以外は誰も見当たらない。

「何か気になるものでもあったか?」
「ううん。少し珍しいなって」

先ほどより幾分か顔色が良くなったAに安堵しながら、錆兎は店内のものを興味深そうに見回す彼女に目を細める。実際、その店に並んでいるのは琥珀色の香水瓶やら小刀など、普通の店ではあまり見慣れないものばかりだ。その分、お値段もそれなりにするが。

「ありがとう、もう大丈夫だと思う」
「まだ休んでいろ、と言っても聞かないんだろう」

アハハ、と口角を上げると、Aはチリンチリンとベルを鳴らして店から飛び出して行った。落ち着きがないと言うかなんというか。
錆兎は苦笑を浮かべながら、幼馴染の後に続いて店の戸を開けて外の地面を踏みしめた。

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squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!こちらこそ、面白いストーリーを提供していただきありがとうございます。頑張ります! (2019年8月3日 17時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続編頑張ってください!!お花見のストーリありがとうございます (2019年8月3日 17時) (レス) id: 35c1a3a4d0 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月2日 22時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - foooooo!!!))ついに来ましたね、続編!!更新頑張ってください (2019年8月2日 21時) (レス) id: 65b8d779c9 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!夏に合わせて海に行ったりとかを考えていたのですが、お花見も良いですね。参考にします、ありがとうございます! (2019年8月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:squid | 作成日時:2019年6月1日 20時

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