外伝ノ伍 ページ28
胡蝶たちが去った後、錆兎はどうしたものかと頭を抱えていたが、いつまでも何もせずにいるのもAが可哀想だと、近場の街へと足を踏み入れる。
間も無く陽が暮れるというのに、街は昼間以上に賑わっていた。その上、時間が時間のため、如何わしい店がチラホラ。
「……どこか落ち着ける場所がないか探してくる。Aはここで待ってろ、いいな?」
流石にこれ以上は目に毒だと、錆兎はAを適当な椅子に座らせる。人混みに酔ってしまったのか、いつもは騒がしいAも静かで、顔色も良くない。これ以上歩かせるのは酷だと錆兎は考えたのだ。
夜の街に男女2人、ということで妙な客引きに遭わないとも限らない。現に先ほども完全に大人向けなお店に案内されかけていた。
「すぐ戻るから、もう少し我慢してくれ」
「分かった」
いつものように優しく微笑み首を縦に振るAだが、やはり無理をしているのか、その笑みは引きつっている。
速く戻らなければと人混みに消えていく錆兎の背を見届けて、Aはボーッとオレンジ色から黒に染まりつつある空を見上げる。
正直に言うと、彼女は朝から体調が優れなかった。季節の変わり目はいつも体調を崩す彼女だが、友達との花見ということで羽目を外してしまったのだ。今はそれのツケが回ってきた、ということだろう。
彼女の鎹鴉が側にいたならば、オマヌケと彼女の額を突っついていたかもしれない。
「あれ、ハナちゃん?」
知らない声が上から降ってきたため、Aは重い頭をゆっくりと持ち上げると、そこには柿色という派手な着流しの男がいた。知り合いだろうか、とAは頭の中から記憶を手繰り寄せるも、やはり見覚えのない男だった。
「あの、人ちが……」
「やっぱハナちゃんじゃん!今朝急に家飛び出して行ってさ、心配したんだ!」
前のめりでAの手を掴む男だが、彼が嘘をついているのはなんとなく分かった。理由は分からないが、それでもこのままでは良くない方向へ行くことくらいは分かる。
強引に立たされ目眩がするが、男は御構い無しにAの腕を力づくで引っ張る。全集中の呼吸で引き摺られるようなことはないが、それでも衰弱している身体には大きな負担がかかる。
「ちょ……離してください!人違いですから!」
「昨晩俺が先に寝たからって、そんな怒ることないだろ?あの店で昨日の続きしてやるから」
周囲はクスクスと笑う中、Aは男に少しずつ、けれど確実に引き摺られ始めた。
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squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!こちらこそ、面白いストーリーを提供していただきありがとうございます。頑張ります! (2019年8月3日 17時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続編頑張ってください!!お花見のストーリありがとうございます (2019年8月3日 17時) (レス) id: 35c1a3a4d0 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月2日 22時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - foooooo!!!))ついに来ましたね、続編!!更新頑張ってください (2019年8月2日 21時) (レス) id: 65b8d779c9 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!夏に合わせて海に行ったりとかを考えていたのですが、お花見も良いですね。参考にします、ありがとうございます! (2019年8月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年6月1日 20時