外伝ノ壱 桜と笑う ページ24
春らしい暖かな風が吹く季節、凍てつくような寒風など嘘のように、淡い色の花が咲きほこる。風が吹く度に薄桃色が弾け、飄々と陽だまりのように笑う若者たちの頬を撫でる。
「お花見なんて久しぶりですね」
「本当に、晴れて良かったなぁ!」
蝶の髪飾りをした女性、胡蝶 しのぶが頬を緩めて微笑むと、隣に座る桃色と若草色の髪をした女性、甘露寺 蜜璃が目を細めて、向日葵のような笑みを浮かべる。
そんな彼女らの隣で、優しそうな顔立ちの女性、Aがボーッと桜の木を見上げている。
「Aちゃん、どうかしたの?」
心配そうに顔を覗き込む甘露寺に、Aはハッと我に帰ると、大丈夫だよ、といつものように口角を上げて笑った。
「ごめんね、お花見って初めてだから……」
「そうなんですか?」
驚いたように目を見開いた胡蝶は、チラリと隣の桜の木の下でワイワイと騒ぐ同僚たちに目をやり、その内の宍色の髪の青年を見つけると、呆れたようにため息をついた。
「……」
しばらく考え込むように口を閉ざしていた胡蝶だが、やがて何かを思いついたように口角を上げて、そういえば、と言葉を続ける。
「ご存知ですか?この辺りには"桃鬼"という話があるそうですよ」
「"桃鬼"?それは鬼の話ですか?」
咄嗟に羽織で隠した日輪刀に手をかけるAに、違いますよ、と胡蝶が首を横に振り、"桃鬼"と言うのはですね、と女性陣では軽い怪談話のような空気が流れ始めた。
一方で、男性陣では酒に酔った宇髄と不死川の取っ組み合いが始まり、それを止めようとした煉獄も加わり、凄まじい乱闘になっていた。
「ただの花見だと言うのに、黙って観賞することもできないのか」
桜の木の枝に寝転がり、その下の乱闘を呆れたようにネチネチとした口調で嫌味を口にする伊黒 小芭内だが、その視線はちょくちょく女性陣の、特に甘露寺の方へ向いているように見えるのは気のせいなどではない。
「伊黒さん、あの花の名前って何だっけ?」
「お前は相変わらずボーッとしているな、時透」
さり気なく女性陣側へ移動している時透 無一郎に、伊黒はやれやれと肩をすくめるが、彼に続いて女性陣側へと足を進め、尚且つ甘露寺の側に座っているあたり、やる事はしっかりやるようである。
「お前は行かなくて良いのか?」
「……俺は良い」
隅の方で桜を満喫する冨岡に、錆兎が輪に入らなくても良いのかと尋ねるも、当の本人は1人で良いと首を横に振る。
これは、鬼殺隊の細やかな花見の話。
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squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!こちらこそ、面白いストーリーを提供していただきありがとうございます。頑張ります! (2019年8月3日 17時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続編頑張ってください!!お花見のストーリありがとうございます (2019年8月3日 17時) (レス) id: 35c1a3a4d0 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月2日 22時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - foooooo!!!))ついに来ましたね、続編!!更新頑張ってください (2019年8月2日 21時) (レス) id: 65b8d779c9 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!夏に合わせて海に行ったりとかを考えていたのですが、お花見も良いですね。参考にします、ありがとうございます! (2019年8月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年6月1日 20時