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壱ノ陸 水明と淡雪 ページ14

【雪の呼吸】

おびただしい数の異形を前にして、Aはお面の下で大きく息を吸う。だがその音は、呼吸音と言うにはか細く高い、吹雪の夜を思わせる音を立てる。

【弐ノ型 斑崩(まだらくず)し】

鬼と鬼の間を縫うように、軽くも凄まじい速さの斬撃が鬼の頸を切り裂く。
先ほどまでただの銀色だった刃は、氷のようなものに包まれており、そこから薄い冷気らしきものが流れている。
先ほどは十数はいた鬼どもは、頭が斬られた瞬間に灰のように吹き付けた風で散り、跡形もなく消えてしまった。
多くの部下がやられたというのに、1人だけとなった三つ目の鬼は、けれど余裕の笑みを崩さない。

「お前ら、鬼殺隊かぁ」

キヒヒと不気味な声を上げる鬼の額にある三つ目がギョロギョロと動いた。すると、どこからかまた悍ましいほどの数の鬼が住宅の陰から姿を見せる。

「それじゃあ俺を倒せねえぞ」

先ほどの倍はある数の鬼が、ジワリジワリとAに押し寄せ、いつまで保つかなぁ、と鬼は高みの見物を決め込んでいる。
どれほど強力な鬼殺の剣士が来ようとも、自分は負けるはずがない、と鬼はタカをくくっていた。
所詮相手は人間。終わりなく触れ続ける配下の鬼を前に、永遠に戦い続けるなどできはしない。例え頸が斬られても、その鬼は消滅しない。
その時、鬼はようやっと気が付いた。
_______もう1人の鬼狩りはどこに行った?

「こんなところに隠れていたか」

Aと配下の鬼……いや、自身の分身の戦闘を、薄汚れた井戸の中から見物していた鬼の"本体"は、背後からした男の声に勢いよく振り返る。

【水の呼吸】

それよりも先に、青い海のような光が揺らめいて、鬼の目の前を通り過ぎる。
鬼が最後に見たのは、口元に傷のある狐のお面と、その下で空気の中を流れる宍色だった。

【肆ノ型 打ち潮】

川が流れるかのような舐めやかな曲線を描いたその斬撃は、鋼の如き硬さをもつ鬼の頸を豆腐のように斬り、Aが戦っていた鬼どもも、黒い霧となって消えた。

「お疲れ様、錆兎」
「ああ。Aの方は怪我はないか?」

彼らの前に現れた三つ目の鬼は、ただの分身だ。そういち早く見破った錆兎は、まだ鬼の探索に慣れていないAに分身を任せ、鬼の視線を彼女に集中させる。その間、錆兎は気付かれないように鬼の本体に近付いたのだ。
その鬼は、決して弱くはない。

「大丈夫。錆兎も大丈夫?」
「問題ない」

ただ単に、相手が悪かった。それだけだ。

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squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!こちらこそ、面白いストーリーを提供していただきありがとうございます。頑張ります! (2019年8月3日 17時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続編頑張ってください!!お花見のストーリありがとうございます (2019年8月3日 17時) (レス) id: 35c1a3a4d0 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月2日 22時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - foooooo!!!))ついに来ましたね、続編!!更新頑張ってください (2019年8月2日 21時) (レス) id: 65b8d779c9 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!夏に合わせて海に行ったりとかを考えていたのですが、お花見も良いですね。参考にします、ありがとうございます! (2019年8月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:squid | 作成日時:2019年6月1日 20時

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