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壱ノ参 赫灼と木刀 ページ11

努力する者はかっこ悪い?
今の彼を見ても、同じことが言えようか。誰かに助けを求めるのではなく、自ら立ち上がろうとする彼を、誰が侮辱できようか。
折れまいとするその目は、人を魅了する美しいものがある。錆兎もAも、我を忘れて魅入るほどのものが、そこにある。
錆兎はその時に、ようやっと気付いた。なぜ親友が、竈門 炭治郎という少年を気にかけていたのか。鬼の妹の話だけではない、この少年のことを。

「うるさい!」

未だ己の頭を岩に打ち付ける炭治郎に、錆兎はその場から飛び出して叫ぶ。突然の声にビクッと背筋を伸ばす炭治郎は、驚いた様子で錆兎に目を向ける。
そんなことなど知ったことじゃないとばかりに、錆兎は炭治郎、と呼びかけて続ける。

「男が喚くな。見苦しい」

見てみたくなったのかもしれない。炭治郎がこれから通る道筋を、その先を。

「どんな苦痛も黙って耐えろ。お前が男なら……男に産まれたのなら」

賭けてみたくなったのかもしれない。この少年なら……いや、彼らなら、この終わりのない絶望の連鎖を断ち切れるのではないか。
1000年以上にも及ぶ、鬼と人の争いを。
錆兎は姿勢を低くし前へ踏み込むと、音もなく姿を消し、錆兎がいた地面だけ砂埃が舞った。
刹那、木刀と鉄のぶつかり合う音が響く。
錆兎が上から振り下ろした木刀を、炭治郎は地面に落ち込まれながらも刀で受け止める。
すると、錆兎は器用に身を翻し、無防備な炭治郎の横腹に容赦のない蹴りを入れる。
ギリギリのところで受け身を取るも、勢いまでは殺せず、炭治郎は吹き飛ばされ、地面に尻餅をついてしまう。

「いきなり何をするんだ!」

突然切りかかってきた錆兎に叫ぶ炭治郎だが、それは当然の反応とも言えるだろう。まだ1度しか会ったこともないような人間が、いきなり襲いかかってきたのだから。

「お前の方こそ何をやっている。刀を握りもせずに。突然鬼が襲いかかってきた時も、お前はそうしているつもりか?」

だが、錆兎はそれがどうしたとばかりに口を開き、炭治郎に刀を握るように促す。
錆兎の言葉に、ハッと何かに気づかされた様子で立ち上がるも、その目には戸惑いがある。
炭治郎も、錆兎の強さは知っている。鬼殺隊である彼は、既に岩を斬っているはずだ。彼の匂いからも、その強さが充分すぎるほど伝わってくる。

「お……俺は真刀で、君は真剣だ」

だから斬れない。そう続けようとした炭治郎の言葉を遮るように、錆兎は笑い声をあげた。

壱ノ肆 赫灼と静寂→←壱ノ弐 赫灼と剣士



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squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!こちらこそ、面白いストーリーを提供していただきありがとうございます。頑張ります! (2019年8月3日 17時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続編頑張ってください!!お花見のストーリありがとうございます (2019年8月3日 17時) (レス) id: 35c1a3a4d0 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月2日 22時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - foooooo!!!))ついに来ましたね、続編!!更新頑張ってください (2019年8月2日 21時) (レス) id: 65b8d779c9 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!夏に合わせて海に行ったりとかを考えていたのですが、お花見も良いですね。参考にします、ありがとうございます! (2019年8月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:squid | 作成日時:2019年6月1日 20時

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