外伝ノ参 ページ26
張り詰める空気の中を、ピリピリとした緊張感が2人の間を行き来する。1人は風柱の不死川 実弥、そしてもう1人は恋柱の甘露寺 密璃。
睨み合う2人だったが、不死川は甘露寺の持つ2枚のトランプの内の1枚を取り、表の面を自分の方へ向け、やがて歓喜の声をあげた。
「上がったあぁぁあ!」
「負けちゃった……」
ハートの3のカードを引き当てた不死川は大きくガッツポーズを決め、ジョーカー1枚を手にした甘露寺は涙を流してその場に崩れ落ちた。
1時間にも昇る長い時間の末に決着のついたそれは、ババ抜きである。
表情の全く読めない冨岡は、そのゲームでは無敗記録を叩き出し、すぐに表情に出る甘露寺と不死川の2人が延々とババのやり取りをしていたのだ。
「たまにはこうして、のんびり過ごすのも悪くはないですね」
「童心は忘れた頃に思い出して見るものだな」
「うむ!しかしこのババ抜き、相手の表情を読み取ると言うのが面白いな!」
南無南無と手を合掌する悲鳴嶼を一瞥し、胡蝶は小皿に盛られた和菓子を口に運び、その隣で煉獄が腕組みをしてワハハ!と豪快に笑う。
これまでは誰かと食い酒を飲むことなどしなかった柱たちは、その時だけは悲痛な現実を忘れて踊り唄い明かしたのだが、それがあまりよろしくなかったのかもしれない。
「……義勇、大丈夫か?」
酒に強い方の冨岡だが、宇髄や不死川に無理やり飲まされた大量の酒に酔い潰れてしまい、現在は目を回してしまっている。
見た目は顔が赤いだけなのだが、錆兎とA曰く意識が飛んでいるらしい。こんな時まで無表情なのは逆に驚きを隠せない。
「……大丈夫だ。Aは酒が飲めたか?」
「義勇、私はこっち」
しばらくしてそう呟いた冨岡だが、宇髄の方へ顔を向けてAの名を呼び、お前はこんなに大きかったか?と首を傾げている。完全にアウトである。
流石に駄目だと、錆兎は慣れた様子で湯呑みに水を注いで冨岡に飲ませる。
「Aも酒を飲むのは程々にしろよ」
「分かった。煉獄さん、もう1杯お願いします」
「分かってないな」
相変わらずの幼馴染にため息をつく錆兎だが、心なしか、頬が綻んでいるように見える。と言っても、すぐにいつもの固い無表情に戻ってしまったが。
しばらくして、錆兎は目の前で酔い潰れて眠る女性の面倒を見ることになり、どうしたものかと頭を抱える。
「……本当に、変わらないな」
集団から外れて眠る女性の寝顔に、錆兎は自身の羽織をAに静かにかけた。
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squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!こちらこそ、面白いストーリーを提供していただきありがとうございます。頑張ります! (2019年8月3日 17時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続編頑張ってください!!お花見のストーリありがとうございます (2019年8月3日 17時) (レス) id: 35c1a3a4d0 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月2日 22時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - foooooo!!!))ついに来ましたね、続編!!更新頑張ってください (2019年8月2日 21時) (レス) id: 65b8d779c9 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!夏に合わせて海に行ったりとかを考えていたのですが、お花見も良いですね。参考にします、ありがとうございます! (2019年8月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年6月1日 20時