Secret Chests 2 [f.k][k.n]

写真 ページ29

机に。
縁談の相手の写真が並ぶ。




どれか選べ、なんて。
ひどい話だったけど。
それだけ。
切羽詰まっていた。




どれも。
高そうな紙に包まれた
高そうな写真には。
綺麗な女の人が入っていた。




机の上、並べられた写真の中に
ひとつだけ。
小さな写真があった。



こちらを向いて、笑ったり。
着飾ったりもしてなくて。
盗撮したような、遠くからの隠し撮り。


「これは？」
聞いたら、じぃちゃんの秘書が
慌てて隠す。
「すいません、これは。
違います。
紛れ込んだようです。」



「この子は？」
俺と同い年くらいの子の
その写真が。
気になってしかたなかった。



「事業報告の
参考資料ですから。」



その写真の笑顔に
見覚えがあった。




「誰なの？」

「さぁ？参考資料なので。
わかりかねます。」


写真を俺から奪って。
逃げるように、席を立つ。



「では、お気に召す方がいらっしゃったら。
お声かけください。」



そう言って、
部屋を出て行く。



急いで。
じぃちゃんの部屋に向かっていて。
俺は、尾行した。
部屋の中から聞こえる会話を
盗み聞きする。



「こちらが。
お探しの、Aさん、の
現在のお写真です。」

「おー、これは。
元気そうで、、、よかった。。。」

「はい。報告によると。
後遺症もなく、健康にご成長されたようです。
可愛らしい女性になられて。
」

「そうか。
面影があるな、、、。
笑った顔が なんだか懐かしい。
この子には、いらぬ苦労をさせてしまった、、、
」

「どうしましょう。

それから、すいません。。。
さっき、風磨ぼっちゃんに
この写真を間違って
先に見られてしまいました。

何か、気にされたご様子で。」


「風磨は。
おぼえていないだろう。
まだ。小さかった頃の話だ。
ましてや、健人の許嫁だとは
気づいていないだろう。」



健人の許嫁。。。
よみがえる記憶と面影。



「それも、そうですが。

もしも、先に健人様が
この方とご結婚されるようなことに
なれば。
問題が複雑になる、ということです。

先手を打ったほうが良いのでは、
ないかと。」




先手。




「ダメだ。
少なくとも。
私達は、手を出してはいけない。

この子の家と約束したんだ。

もしも。
もしも、Aさんが風磨や健人を
自ら選ぶようなことがあった時のみ。

結婚を許す、と。
」




「許嫁の約束は。
あるようで。
ないようなものだ。」





なら。
俺が先に。


許嫁を
奪うしかない、と。
思ったんだ。

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