Secret Chests 2 [f.k][k.n]

風 ページ21

風磨が。
顔を上げる。



強く蔑み、私を睨む。



そして。

バンッ！
机を叩きつける。



立ち上がると同時に
椅子が倒れる。




音に驚いている間に

風磨は、圧倒的な佇まいで
私の目の前に、
立ちはだかった。


そして、私を見下ろす。




「ふっ。」
微かに笑った？
その慣れた笑顔に、心が油断する。






次の瞬間。






伸ばされた大きな手で
風磨の胸に
抱きしめられる。
引きづられるように。
フワリと。
覆い隠すように。



切り離すように。




完全に風磨の腕の中に
埋め込まれて
身動きが取れない。

視界は
風磨でいっぱいになる。





中島君に
繋がれた手は
あっという間に
解かれる





ずっと震えてた手が
知ってるあたたかさの中で
だんだんと
落ち着いてくる。






「ごめんな。」
耳元で微かに風磨の声がした。







次の瞬間。






私の体を
中島君から離すように
クルッと回転させ
風磨の背中が
その距離を遮断した。








そして









チュッ。









唇に。
あたたかな感覚。



風磨の息が
口に広がる。






一瞬で。
だけど。
長くて。


胸が苦しくて。

離れたくなくて。





離れた瞬間に
冷たい風が、唇を伝う。









「彼女は
俺の妻ですが。
見間違いでもしてるのでは？」
風磨が
躊躇なく話続ける。



「離婚をするのは。
ただ、状況を終着するため。
書類なんて、関係ない。

法律がどうだろうと、
戸籍がどうだろうと。


Aは。
俺の妻、ですから。




誰が何を言おうと。
俺の妻は、
Aですから。

Aが。
たった1人。
俺だけの嫁ですから。






帰ろう。
A。


」






立ちつくす人達の間を
抜け出して。

風磨にしっかりと握られた手を引かれて。

部屋を出る。





何も言わず。
長い廊下を歩く。


風磨は
動揺してる様子もなくて
ただ、まっすぐ前を見て
いつもより歩幅が大きい。




玄関に着くと、待ち構えていた
車に2人乗り込む。



それでも まだ風磨は
手を離してくれない



車が発車する。



私の手を
風磨は何度も何度も
握り直して。



しばらくして
風磨が「閉めてください。」
運転手さんに指示すると。
後部座席との間の壁が、ピシャリと閉まった。



それを確かめた時には



風磨の唇は
私の唇の すぐ10cmくらいのところにあって。




伺っている。




「、、、、もう。
ダメだから。
俺は。」

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