Secret Chests 2 [f.k][k.n]

時間 ページ12

こんなことなら。
早い時間にすれば良かった。





朝起きて。
何度時計を確かめたんだろう。
時間が近づくたびに。

怒りなのか。
不安なのか。
わからない感情のまま。

鼓動が重く波を打つ。







学校を休んで。
10日経って。
平日の昼間に流れるテレビ番組に慣れてきて
その音で
時間を知る。






昼ごはんを食べて。
自分の部屋に戻って。
机の上の、紙に。
そっと触れてみる。

電気みたいにビリビリと
感触がした気がした。

この約束を結んだもう一つの紙を
はじめて見た日。
にやけた顔が止まらなくて。
紙に名前を書く、風磨の背中を
後ろから眺めて。
風磨が、こちらをむいたら
にやけた顔を隠して。

心の中で。
妻って、言葉を何度もつぶやいて。

菊池って苗字が。
くすぐったくて。





くすぐったくて。






、、、、、、









その約束を。
私は。
破棄しようとしてる。








もう一つの紙には。
私の名前が。
もう、書いてあって。
人ごとのようにも思えた。








一度、別れる。
形だけ。

そう、ならないんじゃないかって。

半分わかっている気がしている。







きっと。
風磨を一度手放したら。

きっと。
もう、二度と。

私のところに帰ってきては、くれない。

愛していない私のところには。








だから。
せめて。


嫌われたくない。


昔、結婚してた、形だけの妻がいたけど。
まーそこそこ可愛かったって。。。

せめて。



思ってほしくなって。









頭に浮かんだ、黒い言葉を
また飲み込もうとしてる。









颯爽と。




じゃあ、またね。
お幸せに。


って、言いたくなる。









だけど。








大っ嫌いなのに。




めちゃくちゃ、憎んでるのに。



全然許せないのに。









頭に浮かぶのは。
はにかんだ笑顔とか。
私をまっすぐみつめる優しい目。

だから。

必死に打ち消して。

涙で。
必死に打ち消して。









腫れた目を。
化粧で隠して。
だけど。
普段、化粧なんて慣れてないから。
下手な自分に
嫌気がさして。









夕陽が少し落ちた時。




チャイムが鳴った。









震える手で。
机の上の紙を、綺麗に畳んで。
カバンに突っ込んだ。

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