わがまま＊ホークス ページ15
「Aっ！」
ドンっ、という扉を開く大きな音と共に、彼の声は聞こえる。
彼の姿をもう一度だけでも見たくて、重いまぶたを開けると、真っ白い天井が広がった。
『けい…ご？』
「A…ッ。」
『そんな泣きそうな顔しないでよ。』
声のする方へ目線を向ければ、そこには今にも泣き出しそうな彼の顔があったので、大丈夫、と言うように微笑みかける。
息が苦しくて、今にも意識が遠のきそうなのに。
病弱で昔からよく入退院を繰り返していた私に、もうすぐ終わりが近付いているというのは、朦朧とした意識の中、なんとなくわかっていた。
きっとだから、あんなに会いたかった恋人が、今ここに居るのだろう。
世間ではNo.2ヒーローとして有名な彼が、どうしてこんな私と恋人になってくれたのかは未だにわかっていない。
いつも忙しそうだったし、過ごす時間も少なかった。
でも少しづつ時間を見つけて遊びに来てくれた時は嬉しかったな。
たまに病院から外出許可が出て、気分転換になるだろうって言って綺麗な海が見える所まで連れて行ってもらったりもして。
でも1番楽しかったのは、彼がおかしな話をしている時だった。
思わず笑ってしまって、その時だけは自分が病人であることを忘れていた、ような気がする。
もう少しだけ一緒に居たかったな。
「…A、ごめん…、もっと一緒に居られれば…」
『今更そんなこと言ってもどうしようもないでしょ。』
顔に大粒の涙を流して、ヒーローとは思えないほど弱気で、らしくもない事を言っている彼を弱々しい声で叱る。
言葉の通り、もうそんなことは言っていられないし、もう少し一緒に居たかったというのも事実だ。
だから、最後だけは。
『ねぇ啓悟、だから今だけは二人で居たい。』
「…うん。」
啓悟は私の言葉に答えるかのように、ベッドの上に放り出された右手を、両手で包み込んだ。
久しぶりに触れた彼の手は何だか温かい。
みんなのNo.2をこんなふうに、私一人で独占しても大丈夫だろうか。
でもきっとこれで最後だ。
このくらいのわがままは受け入れて欲しい。
『ねぇ啓悟、好き。』
もう一度だけ私の気持ちを伝えたくて、口を動かす。
もう目を開けているのも辛くなって、言葉を放ったその瞬間に閉じた。
「A、俺も、好きだ。」
彼がそう、言葉を紡いだ瞬間。
彼女は安心したのか、意識を手放した。
逆ナンしようとした男の人がヴィランだった＊荼毘→←過去＊黒霧
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ユリ(プロフ) - 雫さん» そう言っていただけて嬉しいです！更新遅くなって本当に申し訳ないです…… (2020年5月11日 1時) (
レス) id: 4145acdb6d (このIDを非表示/違反報告)
雫 - 黒霧さん最高…いぇーい＼(^o^)／ (2020年5月8日 16時) (レス) id: f53115cc0c (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 鳳蝶さん» うわぁぁありがとうございます！！私もホークス好きなので書いてて楽しかったです！！ (2020年4月3日 0時) (レス) id: 4145acdb6d (このIDを非表示/違反報告)
鳳蝶 - これよ。これですよ。わたしが待ち望んでいたものは。やっぱりユリさんは凄いですね！！書いていただきありがとうございます！！ (2020年3月29日 15時) (レス) id: 021b07b710 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 座布団さん» リクエストありがとうございます！書かせて頂きます((o(*>ω<*)o)) (2020年3月24日 0時) (レス) id: 4145acdb6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユリ | 作成日時：2020年3月5日 19時
