麒麟姉妹 (ページ3)

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麒麟姉妹ページ3

かごめかごめ

カゴの中の鳥は

いついつ出やる

夜明けの晩に

鶴と亀が滑った

後ろの正面＿

伐折羅「だぁ～あ～れ～」

信仰されなくなった龍神様を祀る廃神社。

夕暮れ
この時間までいると神隠しに遭うとよく親に言われ、叱られたものだ。

少女が姉の背後に、姉は屈んで目を瞑り耳を澄ませる。

藕花「伐折羅？」

伐折羅「えへへ」

この遊びは大人数でするものだが、この姉妹はそれが出来ない。

姉妹は【麒麟】なのだ。
神獣と言えば分かるだろう。世に幸福をもたらす神聖な生物。

そう聞くと感謝されて当然だと思うだろう。

この世界では目の色が豊かだ。青や紫…その他彩やかな色が一般的だ｡だがこの姉妹は全ての色が混ざりあった「黒」だったのだ。

人間は黒を穢された存在とし忌み嫌い差別した｡それ故にこの姉妹も差別を受けてきたのだ｡

伐折羅「いつも姉さんといっしょだけど友達ってなんだろ､楽しい？」

にこやかに姉に聞く伐折羅と呼ばれる妹
藕花は無知なもの程恐ろしいものは無いと心底思った。

純粋で無垢なのだ。

藕花「…さぁねぇ」

姉は立ち上がり、鬼門の方向を向いた。

長い黒髪を風に揺られ､儚く夕日を浴びるその姿には誰もが魅了されるだろう。

伐折羅はそんな姉が大好きだ。

伐折羅「姉さんにも分からないことってあるんだね。ヘヘ」

藕花「ふふ、そうだよ」

無邪気な笑顔の妹に対し、藕花は母親の様な暖かい微笑みを浮かべてみせた。

｢カー…カー…｣

カラスが帰る時間だと言いたげに鳴き始めた。

藕花は鬼門に背を向け伐折羅に手を差し出した。

藕花「手繋いで帰ろっか」

伐折羅「カラスといっしょに帰りましょ～♪」

藕花の手を取り、歌いながら廃神社を後にした。

夕焼け小焼けで日が暮れて

山のお寺の鐘が鳴る

お手々繋いで皆帰ろ

烏と一緒に帰りましょ

藕花「伐折羅は歌も得意だね」

伐折羅「すごいでしょ？」

藕花「母さんも喜ぶよ」

伐折羅「じゃ今度母さんのとこ行こ!」

藕花「そうしよっか」

伐折羅「うん!」

藕花は心底心を痛めた。

純粋で素直な妹が成長するにつれ、人間の差別によって穢されていく事になるのだ。

伐折羅には私しかいない。唯一理解してあげられる存在なんだ。

私が頑張らないでどうするの。

姉の意志は強く、どんな岩よりも堅い。