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それは、五条とAが10歳の時のことだ。
「悟くんは好きな人いるの?」
唐突に聞かれた質問に、五条は思わず眉をしかめた。
五条家の庭で、池に泳ぐ鯉を眺めていたのだが、会話が途切れたところでのこれである。
「お前、ほんといきなりだよな」
呆れ気味に呟けば、隣にしゃがんでいる少女は心外だと言わんばかりに頬を膨らませた。
「“お前”じゃないよ、A」
「今それどーでもいいだろ」
この頃の五条は、まだAを変わってる女くらいにしか思っていない。
それでも、遊び相手としては飽きなかったのか、それなりに仲良くやっていた。
「好きなやつ、ねぇ」
「うん。…いる?」
「…俺からすれば、全員この鯉達と同じだよ」
そう言って、五条は目の前を泳いでいる鯉を指差す。
Aは考えたあとに、よく分かんない、と首をかしげた。
「見てろ」
そう言って、五条は水面に向かって餌をばら撒く真似をする。
すると、それまで優雅に泳ぎ回っていたはずの魚達が、急にバタバタと暴れはじめた。
「わっ!」
それに驚いたAは、慌てて立ち上がって後ずさる。
そんな彼女を見ながら、五条は子供らしさを見せずに笑った。
「な?こいつら、餌の事しか考えてねえの。現実のやつらも一緒だ」
結局俺から恩恵受けたいだけだろ。
そう言って、再び池に視線を向ける。
すると、しばらく黙り込んでいたAが、突然立ち上がった。
驚いてそちらを見ると、彼女は怒ったような表情をしている。
「…おい、何そんな……」
五条の動揺を無視して、そのままスタスタと歩み寄ると、真っ白な髪をぐしゃぐしゃに撫で回した。
「私は、そういうのじゃなくて、
ちゃんと悟くんが好きだもん!!」
言い切ってから、Aは自分の行動に気付いたらしい。
ハッとして手を離すと、みるみるうちに顔を赤くしていった。
一方の五条も、自分の顔が熱くなるのを感じる。
「…ッバッカじゃねーの……」
そう言うのが精一杯だった。
その後、二人の間に微妙な空気が流れたのは言うまでもない。
その日以来、Aはそれを黒歴史として、心の奥に封じ込めた。
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0.5mmの替え芯(プロフ) - ただの本名;只野です。さん» 返信がかなり遅くなってしまいすみません!コメント有難うございます。更新を待っている、応援していると言って頂けるだけで、本当に嬉しくて……これは完結させなければという気持ちになります。長い休載を挟んでしまいましたが、最後までお付き合い頂ければ幸いです! (10月3日 20時) (レス) id: 631ae05995 (このIDを非表示/違反報告)
ただの本名;只野です。(プロフ) - 神作品見つけるの専門謙スカポンタンの只野です。気になって軽ーく見てたら最後まで見てました。更新気ー長に待ってまーす。もちろん、応援も添えて (7月31日 10時) (レス) @page11 id: e7ab028975 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:0.5mmの替え芯 | 作成日時:2023年7月8日 10時