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帰りの車の中で、Aは少しのあいだ羞恥心に苛まれた。
「俺とお前なら余裕」と言われて、首を縦に振ったはいいものの、今回の呪霊はほぼ五条が瞬殺したようなものだったからだ。
まあ、つまり、あまり力になっていない。
かっこつけるんじゃなかった……
少し赤くなった顔を見られないように、窓の外の景色を眺めている振りをする。
けれど、普段は必ず話しかけてくる五条が、今日は静かな事を不思議に思って、ちらと横目で様子を窺ってみた。
「…あれ……」
すると、彼はいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
腕を組んだまま、すやすやと寝息を立てている。
…珍しい。
そう思うと、無意識にAの手が伸びた。
***
瞼の上にかかった白髪を、そっと避けてやる。
それから、頬を人差し指でつんとつついてみた。
いつもはこんな風に寝顔を見ることなんて出来ないから、なんだか新鮮だ。
さっきまでの羞恥心など忘れて、Aはその寝顔をじっと見つめる。
ふと、五条が寝言を呟いた。
「………A……」
────その時、Aは自分の心臓がきゅんと一跳ねするのを感じた。
「……ん?……いやいや……」
一瞬、自分でも自分の感情が分からなくなる。
急に喋ったから、心臓がびっくりしただけだ。
そうに決まってる。
きっとそうだ。
「…どうかしましたか……?」
「あ、ああいえ、大丈夫です」
バックミラー越しに心配そうな視線を送ってくる補助監督に笑顔を向ける。
気を取り直して、Aは再び外の風景に目をやった。
もうすぐ日が暮れる頃だ。
早く帰りたい、と何故か思った。
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0.5mmの替え芯(プロフ) - ただの本名;只野です。さん» 返信がかなり遅くなってしまいすみません!コメント有難うございます。更新を待っている、応援していると言って頂けるだけで、本当に嬉しくて……これは完結させなければという気持ちになります。長い休載を挟んでしまいましたが、最後までお付き合い頂ければ幸いです! (10月3日 20時) (レス) id: 631ae05995 (このIDを非表示/違反報告)
ただの本名;只野です。(プロフ) - 神作品見つけるの専門謙スカポンタンの只野です。気になって軽ーく見てたら最後まで見てました。更新気ー長に待ってまーす。もちろん、応援も添えて (7月31日 10時) (レス) @page11 id: e7ab028975 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:0.5mmの替え芯 | 作成日時:2023年7月8日 10時