【小説】百花繚乱妖ノ宴【募集企画】 (ページ22)

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2日目　（2/3）　物陰からの光景　【犬崎　恋】ページ22

｢鈴鳴殿、風邪薬をくれんか？｣
｢250円だよ。毎度ありー。また来なよー」
現在、すずに会いに妖界の薬屋『新月』に俺はいる
すずはここで妖怪や迷いこんだ人間用の薬を売っている。

入った方が良いのだろうが俺はビビりな上に少々人見知りのため近くの茂みに隠れていた
すると誰かやって来た、見たことのある奴だ

｢そこにおるのだろう？気配を消しても無駄じゃよ。｣
「お仕事中失礼します。昨日はコムが申し訳ございませんでいた。」
「待って、フィン。私が見たのは…」
「会ってますよ。」
｢わっちも悪かったのお。人間扱いしたのが気にさわったから呪いをかけたのじゃろ？｣
コムと呼ばれた少女…すずに呪いを植え付けた奴は戸惑っているようだ

｢まぁ、困惑するのも無理はのうて。･･･これで分かる？｣
「…」
「これ以上この姿だと持たないから戻るね。･･･これで信じてくれたか？」
「そう言う絡繰りか…」
「そう言うことじゃ。人間の時はあれぐらいじゃないと体が持たなくなるでの。だから、弱く見えたんじゃよ。コムとやら、呪いのかかっている腕を出せ。」
「あぁ…」
すずが呪いに触れると硝子が砕けるように飛び散って消えた

「は、えっ。もう解けたの？」
｢解いたぞ？さあ、こちらも解いてもらいたいのだが？｣
「あれが解けたんだから、それも自分で解けないの？」
｢あれはただの呪詛返しじゃ。私以外には解けんようにしてあるから解けんかっただけじゃよ。
だから、私にこれは解けん。解けたらもう解いとるじゃろ？｣
「それもそうか。手、出して。」
先程と同じく触れて、詠唱を唱えると呪いが一瞬で消えた

｢もう帰るんじゃろ？これを持っていけ｣
すずが小袋を投げると、コムは片手で受け取り、「何これ」と呟く

｢それは回復薬じゃよ。噛んだら苦いじゃろうから、何かと一緒に飲み込むんじゃよ。｣
「…＿＿＿＿」
「それでは失礼致します。」
｢気をつけて帰るんじゃよー。｣
すずは二人を見送ると微笑んだ

一部始終見ていた俺は傍からみるとヤバい奴だろう
それに隠れていたのもきっとバレているハズだ

『…許していいの？』
完全に二人が帰ったのを見ると俺はすずに話しかける

「あ、あぁ…」
すずはこちらに視線を向けるとまた作業を始めた

『そっか…それじゃあね！』
そう言って俺は新月を去る
もう少し駄弁っても良かったのだが仕事の邪魔をするのは気が引ける

コムっていう子とももしかしたら分かり合えたのかもしれない
そんな事を考えながら帰った