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視点:鈴16歳


…起きてからどれくらい経ったんだろう。

朝はなかなか起きあがることができない。すぐに起き上がると目眩や吐き気に襲われるのだ。だから起きて少し経ってから立つようにしている。


(…太陽の位置的にもう昼だなぁ。そろそろ大丈夫かな)


ゆっくりと起き上がり、立ってみる。


(うん、今日も大丈夫だ!)


体に不調がないことを確認して歩き出す。
最近調子が良い。このままいけば夢である甘味処へも行ける日は近いだろう。
甘味処に思いを馳せながら歩いていると台所に着いた。


『お母さん』

弦音「あら鈴。起きたの。今日はどう?大丈夫そう?」

『うん。最近調子が良いんだ。
昼餉の準備?手伝うよ』

弦音「そう、良かった!じゃあ、お手伝いお願いするわね。…と、その前に顔洗ってきなさい」

『はーい』


母、弦音は怒ると怖いが、優しい人だ。16歳にもなるとそろそろ家族のためにも働くか見合い相手を探さなくてはならない。母も分かっているだろう。しかし、私の体調をきづかってか、この話題を出してくることはない。


(…申し訳ないな)


何もできない自分が嫌になる。恩返しの一つや二つしたいのに。


____鈴ねえは元気になることだけ考えてれば良いの。それが俺たち家族全員の願いなんだから。


いつだったか音羽に言われたことを思い出す。
我が弟ながらかっこいい。あれはモテるな。と気持ちを持ち直しながら顔を洗い台所まで歩いていると、何かを持ち駆け寄ってくるもう1人の弟、羽音に会った。


羽音「お姉ちゃん!!」

『羽音、どうしたの?』

羽音「これ!静と作ったの!お姉ちゃんとお兄ちゃんにって!」


渡されたのは綺麗に編み込まれた花冠だった。


『!凄い、上手ね。とっても嬉しい!ありがとう、羽音』

羽音「えへへ」


頭を撫でると目を細め笑う羽音。…可愛すぎる。


羽音「お姉ちゃんが早く元気になって一緒にお出かけできますように!ってお願いしながら作ったの!」

『!…ありがとう』


泣きそうになりながらもまた撫でると、羽音は嬉しそうに笑い静のもとへ走っていった。


(…本当に、ありがとう)


暗くなっていた気持ちを励ましてくれた弟たちに、花冠に向かって感謝を伝えながら、母の待つ台所へと向かった。

参→←壱



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実弥 - 更新ファイト! (2020年12月19日 19時) (レス) id: e16b3d02e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大きなくまさん | 作成日時:2020年8月29日 23時

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