今宵、あなたに夢を。 (ページ12)

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１２《過去②》ページ12

「ねぇ、Aちゃん、これから遊びに行こうよ！」
『ごめんね、私早く帰らないとママに叱られるから…。』

母親の教育熱心さは変わらなかった。
そのせいもあって、私は学校での友達はいたものの外で遊ぶ事は一切できなかった。
友達の家に行くことも、一緒に公園で遊ぶことも、ショッピングに出かけることもできなかった。
少しでも学校から帰るのが遅れると、待っているのはヒステリックになった母親だった。

「そっか、じゃあまた明日ね。」

その日も私は友達の誘いを断って、誰よりも早く教室を出て家に帰った。
事件が起こったのは、その翌日だった。

「皆さん、席についてください。」

朝の授業が始まる前、担任の先生と校長先生が教室に入って来た。

「実は、昨日〇〇さんのお財布が無くなってしまいました。」

先生のその言葉に、教室は一気にざわついた。
その子は私を昨日遊びに誘ってくれた、クラスでも明るい性格の女の子だった。

「〇〇さんのお財布は、昨日のお昼休みにはあったそうですが放課後になって確認した時に無かったことに気付いたそうです。…誰か見た人はいませんか？」

先生が言い終わると、その子は泣き出した。

「お財布の中に…死んだおばあちゃんの写真があるんです…誰か知ってる人がいたら教えてください…！」

その子が泣いてしまったことで、教室はざわめきを増した。
とはいっても、私は一番に帰ってしまったせいで何も知らなかった。
すると、別の女の子がこう言った。

「そういえば、Aさん。昨日すごく早く教室出て帰っていったよね。」
『え…』
「そうだ！何であんな早く帰ったんだよ！」

その言葉を最初に、次々にその子の意見に賛成する声が上がっていった。