その男、危険人物 ページ38
真っ白な白衣を身につけたメガネの男が、何かのレポートをサラサラと書き込んでいる。内容は分からないが、どうやら藤堂 真の死体の状態についてらしい。
『状態は良好。腐敗は進んでいない。あのお方の美しいお身体は今も健在。･･･しかし、これもいつ続くか分からない。やはり早急に時使いを捕えねばならない』
この男もまた『超能力者』だ。
その力は『模倣』。即ちコピー。
コピーの仕方は『超能力者の血を取り込む』こと。
そして、この力の最も厄介なところは
『同じ力を持つものの血を取り込んだ場合、その力が増幅される』
ということ。
だから、この男は『魂の部屋』にいるのだろう。
魂の部屋と聞けば聞こえはいいが、正確には『処理場』だ。
超能力が伸びる様子のない子供、反抗する子供、そもそも力が弱い子供をこの部屋に押し入れて、毒ガスで×す。
そして、その子供の血を取り込む。
･･･もともとこのための部屋ではないが･･･それに×す目的ではないが、この男の力を伸ばす為に、この子供達は犠牲になってゆく。
この男は、多くの『犠牲』と『流れる血』によって、自らの力を成長させている。
恐らく･･･このラプラスの瞳の中では『危険人物』の類に入るだろう。
その男の名は、荒滝 竜。
ラプラスの瞳の、No.2だ。そして、真が死んだ今、この男が牛耳っていると言っても過言ではない。
･･･そんな、ある日の事。
例の子供が突然『居なくなって』から早5年はたった頃か、目が霞み、突然違う景色に変わっている事が多くなった。
海の時があれば、山が見える時も、なんなら軍艦のようなものが見える時まである。
竜「･･･疲れているのか」
始めはそう思っていた。
しかし、何度も続く内、おかしな事に気がついた。
(これは、足の感覚も、空気も変わっている)
単なる目の異常ではない。
なんだ？超能力が、連鎖的に新たな力を発現させたのか？だとしたらこれは･･･？
竜「･･････トリップか･･･？」
聞いた事はあった。確か、異世界に転移するとか、そんな･･･。
竜「･･･ッ！そうか･･･！！」
もし、例の子供は居なくなった訳ではなく･･･。
異世界に『トリップ』していたら？
だったら説明がつくな。そうだ、この力で、例の子供と、あわよくば時使いを見つけ出せたら。
そしたら、その血を取り込めば、私は正しく最強となる。
私が、この世界を導いてやるのだ。
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作者名：朱雀 | 作成日時：2016年11月4日 7時
