第3話 ページ5
大広間の目の前まで来た男は中から溢れ出る強い殺気を物ともせずにスパンと障子を開け放った。
それと同時に自分に向かって振り下ろされる刀を片手で受け止めた。
簡単に受け止められたことに刀の持ち主は大きく目を見開かせ、男を凝視してしまう。
自分を凝視する一振りの刀剣に男はフッと笑みを浮かべ、刀から手を離した。
「燭台切光忠か。流石と言えば流石だが、殺気でバレバレだぞ」
燭台切「君は…それにその気配、人間じゃ、ない？」
「おいおい、俺をあんな欲に塗れた汚い人間共と一緒にしてくれるな。まぁ、俺のことは後だ…それより」
人間の言葉を聞いた瞬間、男の気配が歪んだような気がしたが、それも一瞬のことで誰も気付いてはいない。
目の前の燭台切から大広間全体に視線を向けた男は大きく目を見開かせ、唖然とする存在に笑みを浮かべてゆっくりと歩み寄った。
ある刀剣の近くまで歩み寄った男はしゃがみ込み、他の刀剣たちが見てる中で手を伸ばして刀剣の頬に触れた。
久しぶりに触れる温もりに男は優しく瞳を細めて笑みを浮かべ、未だに大きく目を見開かせるその刀剣––三日月の頬や瞳の下を優しく触れていく。
やがて三日月が浮かぶ朝ぼらけの瞳からは涙が溢れてくる。
「汚れてんな、三日月」
三日月「ぁ…理玖、兄様…？本当に、理玖兄様、なのか…？」
「あぁ、そうだ。悪いな、遅くなって」
三日月「っ…理玖兄様！！」
男––理玖に勢い良く抱き着いた三日月は朝ぼらけの瞳から溢れ出る涙をそのままに目の前の存在に必死に縋り付いた。
勢い良く抱き着いた三日月を難なく抱き留めた理玖は優しく微笑み、泣き縋る三日月の髪や背中を撫でていく。
自分の髪や背中を撫でてくれる手はあの日から何一つ変わっていなくて、暖かくて、優しくて…
大好きで大好きで、何度も何度も会いたいと願った。
穢れを知らないこの人とは違い、自分はこんなにも汚れてしまった。
だから、この人に触れることを躊躇、躊躇ってしまったがそれでも触れられずには居られない。
もう目の前の愛おしい存在を手放したくないと理玖の服を握り締める手に力を加えた。
「さて、お前らもおいで––今剣、小狐丸、石切丸、岩融、鶴丸」
小狐丸「理玖兄様！」
今剣「あにさま！」
石切丸「理玖兄様！」
岩融「兄者！」
鶴丸「兄者〜！」
腕を広げる理玖に涙を溢れさせた三条派と鶴丸が一斉に飛び付いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 617人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理玖(元海斗)(プロフ) - 腐男子さん» コメントありがとうございます！青鬼=ブルーベリー色の全裸巨人、でしょうか！？その全裸巨人が誰か分からないですが、面白かったようで良かったです！因みに巨人は……常に全裸ですよ(｀･ω･´)ｷﾘこれからもよろしくお願いします！ｯ (2017年8月9日 15時) (
レス) id: cad6e37131 (このIDを非表示/違反報告)
腐男子(プロフ) - 青鬼で、ブルーベリー色の全裸の巨人が頭に浮かんで吹いてしまったww (2017年8月9日 12時) (レス) id: 0ac4eb286b (このIDを非表示/違反報告)
理玖(元海斗)(プロフ) - 萠さん» コメントありがとうございます！続編、待っててくださるのですか！？ありがとうございます(*´∇｀*)頑張って続編も完成させますね！これからもよろしくお願いします！ (2017年7月10日 3時) (レス) id: cad6e37131 (このIDを非表示/違反報告)
萠 - 続編待ってます！応援してます！頑張ってください！ (2017年7月9日 20時) (レス) id: c6855e4cbe (このIDを非表示/違反報告)
理玖(元海斗)(プロフ) - 空絵エスカさん» 返信遅れました！成る程、やはりそうでしたか。四男、めっちゃ男前ですね！これぞニキですね。次男と三男も四男を見習ってください(笑) (2017年7月9日 16時) (レス) id: cad6e37131 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：理玖(元海斗)
| 作成日時：2017年6月18日 7時
