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再会と約束 【回想】 ページ8

その靴を見た途端、絵奈は駆け出していた。

いつもならちゃんと並べる靴も脱ぎ捨ててダイニングへ駆け込んだ。

そこに居たのは前会った時よりも心做しかたくましくなった兄の姿だった。

「あぁ、絵奈おかえり」

落ち着いた低めの声。

慈愛に満ちた安心できる声。

「祐希!ただいま。それにおかえり!」

「うん、ただいま。…って、あ〜。また顔怪我してる」

ギョッとした顔でこっちに近づいてくる。

だって__と事情を説明しながらむくれる。

相手にやられたから、同じような事をやり返しただけ。

先に手を出したのは相手だと言うのに。

それでもはいはいと聞き流しながら手際よく手当てしてくれる祐希。

「絵奈は本当に可愛い顔してるんだから、傷付けちゃダメだよ」

頭をポンポンと撫で、諭すように言う。

祐希は妹の私から見ても優しすぎる。

だから最初に呪術師をやると聞いた時はとても驚いた。

でも自分が少しでも役に立てる世界があるのなら、と言い切った兄の目は揺るぎのない決意に溢れていた。

それを両親も察したのか何時でも帰って来なさい、と送り出した。

基本は毎休暇ごとに一時的に帰って来る。

でもここ最近は昇級して忙しいらしく、帰省することは少なかった。

晩ご飯が出来るまでの間、2人並んでソファに腰掛け祐希の話を聞いていた。


強面の先生に拳骨を食らった話。

地方の任務に出た時にお世話になったおばさんに豆腐を沢山貰って、生徒皆で豆腐鍋パーティーをした話。

自分のいくつか上の代が最強と呼ばれている話。

一通り話終わると祐希はふぅと息を吐き出した。

大きめのアーモンド型の目は伏せられていて影が落ちていた。

あの気持ち悪い化け物達と毎日闘っているのだ。

時には呪詛師という同じ人間を手にかける事もあるらしい。

ただでさえ普通の人にも辛いことだ。

心優しい祐希には、かなりダメージが強いんだろう。

でも私には何も出来ない。

私は祐希を苦しめる呪霊や呪詛師の存在を抹消することが出来ない。

祐希の手を優しくとると、彼の体が小刻みに震えていた。

「絵奈は居なくならないで。置いて行かないよね」

「大丈夫。私はここにいるよ」

そう答えると祐希は私を強く抱きしめた。

しばらくその状態でいると祐希はポツリと言葉を零した。

「約束してくれる?」

それは私が呪術師にならないこと。

「絵奈にはおばあちゃんになるまで、普通に、平和に生きて欲しい」




私と祐希の最後の約束。

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作品ジャンル:アニメ
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オーステン(プロフ) - プスメラウィッチさん» 有難うございます!まだ始まったばっかりでオチとか全然考えてないんですけど、候補に入れておきますね。 (2022年4月27日 7時) (レス) id: e73df44190 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年4月27日 7時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はい^_^ファイトーーー!! (2022年4月12日 0時) (レス) id: 17ec247796 (このIDを非表示/違反報告)
オーステン(プロフ) - 舞さん» ありがとうございます!頑張りますね✨ (2022年4月11日 7時) (レス) id: e73df44190 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2022年4月11日 0時) (レス) @page11 id: 17ec247796 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:オーステン | 作成日時:2022年2月13日 22時

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