少女よ、祓え

パンダ、喜びの舞 ページ17

翌朝、絵奈と真希は黙ったままだった。

教室に入っても誰も一切会話はなく、五人は沈黙したまま座っていた。

そして、椅子を立つ音がした。

その音は絵奈によるものだった。

そのまま真希の席に向かう絵奈に、喧嘩を売るのかと慌てて立ち上がるパンダと棘。

二人が引き止めるよりも早く、絵奈は真希の前に立った。

｢ねぇ真希。私、運動着欲しい。一緒に買いに行こ｣

｢え｣

｢別にいいけど、いつ行くんだ？｣

｢え｣

そのまま仲睦まじく会話をする女子二人。

｢えええええ｣

昨日とは打って変わった様子にパンダは大声で叫んだ。

それはそれは大きな声で、若干木霊していた。

同じく席を立った棘と目を合わせると、そのまま会話を続ける二人の頭をわしゃわしゃと撫でた。

髪型が崩れると文句を言われても無視して撫でるパンダ。

一頻り撫でたら、今度は喜びで教室の真ん中で踊り始める。

ヘンテコな舞だけど、本人(本パンダ)は楽しそう。

それに乗った棘は乙骨の手を引いて一緒に踊る。

三人の様子を見てくだらねぇなんて言いながら、何だかんだ踊る真希。

便乗して絵奈も踊り始める。

授業開始から当たり前のように遅刻してきた五条が見たのは笑顔で踊り回る生徒たちの姿。

｢え、何コレ｣

どうしてこうなったのか全く分からず混乱する担任を見て、更に笑いが起こる。

謎のダンス会は、調子に乗った棘が転んだことで終わりを迎えた。



その後、絵奈は四人と別れて五条と呪具庫に来ていた。

元々絵奈は術式だけで呪霊を祓っていた。

それだけで十分祓えていると思っていたが、五条によると

｢えー、ぶっちゃけ絵奈が祓えたのは相性が良かっただけだよ。言っちゃあ運だね。相性が悪ければ3級呪霊でも苦戦するよ。今のままだと近いうちにあの世行きだねー｣

だそう。

あまりに軽い物言いだが、言っていることは正しい。

絵奈の術式は一撃必殺系では無く、多数の打撃を与えて祓う方が得意である。

だから、相手が一撃必殺系だと戦いやすい。

その逆に動きの素早い相手だと、一撃一撃の攻撃力が高くないことから相手にアドバンテージを与えてしまう。

そして、創糸操術の短所とも長所とも言えるのが遠距離向きだと言うこと。

どちらかというと、味方のサポートに向いているということ。

これらを踏まえて五条が出した結論は、短距離攻撃も出来る呪具を使えば良いと言うこと。

パンダのように拳で戦うも良いが、いまいちパワーに欠けるので却下された。

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