虚言3(短編集) (ページ7)

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Bs11(F18)...male ページ7

旭は自身のロッカーで探し物をしていた
数時間前に小さな紙に取ったメモを、ロッカーに置いたまま無くしてしまっていたみたいで
椅子に座りながら、ロッカーの隅々まで、手を忙しなく動かし、探していると

『痛っ、』

旭の指先には、鋭い痛みが走る

「どうしたの」

『あー、最悪や』

偶然居合わせていた山﨑が優しい声色で心配する中
ロッカーの隅のどこか、金属のバリか何かが飛び出していたのであろう
出血する程に、それは旭の指先に刺さった

血液は玉のようになり、溢れるように指を伝う
人の怪我も、自分自身の怪我も、小さなものでも目視することが苦手な旭は、顔や体に鳥肌が立った

山﨑の事を認識せず、独り言を続けていた旭

『地味に痛いやつやんこれ…』

「見せて、」

山﨑はそんな旭の手首を掴み、自身の方に引き寄せ、珍しいものを見るかのように凝視した
それにやっと、旭も山崎へ言葉をかける

『あんま見ん方がいいですよ、血出てるとこなんか』

そう言って彼に掴まれている腕を自分の方に引こうにも
山﨑の力が強く、山﨑は旭の指先から目をそらなさかった

『あの、もう、拭くので』

そう言って、彼の手を無理にでも振り払おうとした時
山﨑はまるで旭の指を喰むかのように、小さく口を開ける

『ちょっ、と』

彼は今まさに自身の指を喰もうとしているのかと気づき、今出せる精一杯の力で、彼の手から抜け出した

『何、しようとしてるんですか、』

まるで何かに乗っ取られたかのように何も言わずにいる山﨑に、旭は恐る恐る話しかけるが

「あー、ごめんね、こうした方がいいかなって」

ただ当たり前の応急処置かのように、先ほどの行動を肯定する

確かに指を切った時など、咄嗟に指を、血を舐める人間はいるだろうけれど
まさか他人の、何が付着しているのかもわからない指先を、簡単に口に含ませることができるだろうか