続 ページ6
『由伸…?』
「キャッチボールはいいからさ、もっと見せて」
『は?』
山本は、日光にあたると明るく透けるような旭の瞳に気づく
目にゴミが入り、自然な涙が分泌された彼の目はまるで、朝露のように光っていて
「もっと俺のこと見て、」
『なに、その言い方』
そんな彼の言葉に、旭は嫌悪感を覚える
山本は外したグローブを拾おうともせず、また旭の頬を包み込み
そして、彼の首や頬、目元に、唇をそわせた
なにが起きたのかわからない旭は、首や頬のくすぐったさに身を捩るしかなく
首を捻り、彼から顔を逸らした
「逸らすなって。」
いつもは聞かない彼の低い声が、旭の耳に聞こえる
『なに、お前…変やで、今日』
旭にとっては山本の小さな感情の変化がわかるのだろう
いつもと様子が違うような山本を嫌うこともなく、旭は心配の気持ちを大きくさせた
それでも山本は旭の頬を啄むのをやめず、遂には舌が見えるほどに口を開ける
薄目を開ける旭の視界には、彼の開かれた口があり、思わず目を瞑った
『何ッ、しようとしてんの、』
「…俺ね、お前のこの綺麗な目が、声が、耳が、全部。見えなくなっても、出せなくなっても、聞こえなくなっても」
「俺お前のこと大好きだからね」
『言うてること、わからんよ、なんも』
山本を宥めるように、旭は自身の状況を説明した
彼の異常な愛には気づいていたが、こんな時にまで彼は愛を伝えてくるなんて
「俺がお前の目も声も、耳も、全部を愛して、守ってるんだから」
『わかったって、わかったから、十分』
山本が旭を噛むようなそぶりは、今まで一度も見せなかった
けれども旭は、彼の舌が見えるほどのあの視界には、流石に恐怖を感じる
『…お前が、俺のこと守ってくれるって?』
「うん、でも、俺が潰してしまうことも、できるからね」
山本の愛嬌のある笑顔は、旭への拒否権を奪い去っているような笑顔で
旭は自身の全てが山本に握られているような気さえした
否、既に全てが握られていた
ただ山本が、口に出していなかっただけで
「言うことくらい、聞いてよ」
彼の冷酷な、不憫なその声色に、旭も
『全部、聞くよ、』
こんな彼の言うことを聞く旭も旭だろう
むしろ互いに異常な彼らだからこそ、ずっと共に居られるのかもしれない
山本には丸わかりの引きつった笑顔で、旭はそう答えるしかなかった。
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作者名:過眠 | 作成日時:2024年1月10日 21時