虚言3(短編集) (ページ30)

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続ページ30

旭はさらに自分自身の負担がこれからは大きくなると感じていた
そして、彼の将来を考えた時、どうせ彼の持ち前の優しさや儚さに惹かれて彼を愛し、また彼もそんな彼女を愛すのだろう
最愛の人ができ、自分にその愛は向けてくれないのだろうと、彼の中での1番では無くなってしまうという将来に、旭は不安を感じていた

『じゃあさ、お前は…俺のことも守ってくれる？』

そう伝えると、田嶋は顔を上げ、切なく微笑む旭の顔をじっと見つめる

旭は田嶋自身から、守られるという役割を奪っていけない気がした
彼を守るという役割からも、旭は逃げてはいけないと枷を掛けられていて

人を守っていながら、守られるということも同時には、欲張ってはいけない気もしていた

けれども旭は、誰かに守られていないと壊れてしまいそうな人と、田嶋と、同じであった

『俺を守ってくれる人は、いないわけ？』

田嶋に見つめられ何秒経っただろうかわからないと、旭が考えていた時には

田嶋は背中を伸ばし、旭の腕の中から抜け出した

いつもは、しばらく2人でこうしているのに、もう良いのかと旭が驚いていると
田嶋は立ち上がり、自分の胸にうずめるよう、旭を抱きしめる

彼を包むように抱きしめることはあっても
彼に包まれるように抱きしめられることはなかった

抱きしめることだけが守ることではないのだけれどと考えながらも

『わかった、わかったよ。守ってくれるんだね、ありがとう』

今日も彼は全力で頑張ったのだろう
彼の肌、ユニフォーム、土の匂いが混ざる感覚に安心を感じる

「俺も、旭のこと守るから。お願いだから、側にいて、ずっと」

小さくも、力強い声で彼はそう言った
その後、簡単に彼の腕、身体は、旭から離れて行く

旭の鼻腔に入るものは、またベンチや球場の匂いに戻った