続 ページ24
触らないでと言いたくても、小さな泣き声しか出ず
旭は熱を持つ自身の手を、廣岡の両手に持っていき、数分前の出来事と同じく、離してほしいと懇願するように優しく重ねた
廣岡がどれだけ自分の感情を旭にぶつけ、突き放そうとも、他責思考を持たない旭は自分だけを責め続ける
けれども、今のように自身の手を引き剥がそうとはしない旭に、堪らない愛おしさを抱えていた
気の違った人間しか、廣岡のこれを愛とは呼ばないだろう
それは旭も同じで
何故彼が自分自身にそうするのか、全くわからなかった
わからないと言うその感情は、旭をさらに疲弊させた
優しく抱きしめてくれたら、彼の今までの行動を全て忘れ、愛されていると実感するのに
彼は自分自身を嬲り殺してしまいたいのかと疑うほどに、廣岡の行動は異常だった
旭の頬を包む廣岡の手をなぞるように、旭の涙は流れていく
首筋や唇にまでも涙が伝い、冷たく、不愉快に感じた
泣き止む事もなく、言葉も発しない旭を見、廣岡が口を開いた
「殴ればええのに」
虚弱な彼にこの言葉を言う廣岡は
旭が抵抗をしないことを十分にわかっている
「俺が何しても突き放さへんやん」
無視をしても、怒りをぶつけても、冷たい言葉を投げかけても
怯えながらではあるが、自分自身のことを嫌うことなく、対等に接する旭
そんな彼に廣岡は、自分自身の行動が許されているのだと感じていた
「…甘えてええの?」
廣岡の行動を異常に思い、許していないながらも、廣岡を攻めることのない旭につけ込む廣岡の行動は
甘えるなんて可愛いものではない
『嫌いなら嫌いって、言ってください』
旭はただ廣岡の本心を知りたかった
本心ではなくとも、自分のことをどう思っているのかが気になっていて
嘘でもはっきりと答えを出して欲しかった
好きになって欲しいなんて言わないけれども
わからないということが不安で堪らなかった
『言ってくれないと、わからない』
彼が自分のことを好きではないのは確信している
好きな人間を無視し、泣かせることなんて、自分だったら絶対にしない
けれども旭と廣岡の思考はそぐわなかったようで
「誰がそんなこと言うたん?俺1ミリも言ってない」
その通りに、廣岡は旭に対し面と向かって嫌いと言ったことはなかった
手を出した事も怪我をさせた事も、他者に愚痴を言った事もなかった
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作者名:過眠 | 作成日時:2024年1月10日 21時