虚言3(短編集) (ページ19)

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続ページ19

旭の首元に顔を埋めようにも、身長差を大きく感じ、簡単には埋めることはできない
清潔にされた彼の髪を眺めていると、自身の胸から垣間見える旭の表情は、心底喜びに満ちた顔をしていて

「騙されんときや」

山下のことと言い、自身に躊躇なく飛び込む彼と言い、なんだか何もかもに簡単に騙されてしまいそうで心配になってしまう

『何がですか』

中川に抱きつくことを許されているという事実と、彼の物理的な温かさが心地よい旭には、中川の心配は届いていない

「別に」

そんな旭の様子に、中川も今の状況を噛み締めようと、そっけなく適当に返事をした

「全部寒い、あっためて」

中川の広い背中に腕を回し、なかなか離れてくれない旭を引き離すことなんてできないと罪悪感が湧いた中川は
自身の胸に擦り寄る旭の髪に、音を立ててキスをする

彼に撫でられるような感覚ではなく、微かに聞こえるリップ音に、旭は自身が今何をされているのかを自覚した

『圭太さん、？』

「んー？」

なぜこんなことをするのかというように彼に聞いても
ぼーっとした答えが返ってくるばかりで
その後も彼のキスは止まず、だんだんと自身の身体が火照るのを感じる
自分が彼を暖めなければいけないのに、自身が彼によって暖まってしまっていて

『そんなんするとか、聞いてないですけど、』

「言わんでも許してくれるんちゃうの？」

本当に嫌なことでなければ全てを受け入れてしまう旭には、山下や中川だけではなく、誰しもが年齢関係なく甘えてしまう

『拒絶もしませんけど…』

「ほなええやんか」

純粋な旭を上手く言いくるめることができた中川は、安心からか、今ならどんな気持ちも旭にぶつけてしまえると思えた

「山下ばっかに構わんといて」

『…嫉妬ですか？』

拗ねるような彼の口ぶりに、旭も少し動揺する
けれども旭もそれを簡単に察することができた

「あかんの」

『あかんことないですけど』

ならいいだろうと、今度は口に出すまでもなく、中川はまた旭を抱きしめる腕に力を入れる

『僕だって、圭太さんのこと好きですから』

「そうか、」

何も言わない中川に何か言ったほうがいいのかと
自分の気持ちを、等価交換のように正直に伝えた

『さっきだって、会えたん嬉しくて、声のボリューム間違えましたし…』