続 ページ18
『まだ20そこらやからなぁ、傷つきやすいんかなぁ…』
後輩である贔屓なのか、山下を心配して甘やかす言葉を独り言として呟く旭に
「…あれ嘘やで。」
少し笑顔を見せたけれども、また冬の寒さのように、中川の声は冷たいトーンに戻る
『え、泣いてますよ。…多分』
そんな彼の言葉に戸惑い、確信を持てないながらも、そんなことないと否定する
けれども先輩に歯向かうことも少し罪悪感を感じ、申し訳程度に挽回するような言葉を付け加えた
「泣いてへんねんなぁ…実は」
騙されている旭を可哀想だと思うように、自身の目を刺すような風の寒さに耐える中川は、目をぎゅっと瞑りながら答える
『…まぁ、由伸とかがいっつも変なこと言うせいやと思いますよ。後輩には優しくせぇて言うときます』
山下の作戦通り、旭は完全に山本を悪者だと認識していた
そんな旭には何を言ってもダメかと中川も感じ
「せやな。まぁ旭がしたいようにしたらええわ」
『はい、そうします…』
半ば放り投げるように、中川は話を無理やり集結させる
そんな中川の言葉に、旭も頭に疑問符を浮かべながらも、彼の意見を受け入れた
そんな彼らの空気を一変させるように、寒い風が吹く
「…寒っ、」
中川がいくら全身を布で包み、寒さを凌ごうとも、布を通して自身の肌を指す冬の風の冷たさに、反射的に寒いと口に出してしまう
摩擦で温めるように両手を擦り合わせるていると、小さくて柔らかい手が横から伸び、中川の手を挟んだ
少しギョッとして、手が伸びてきた方向へ慌てて振り向くと
『あったかいですか?』
旭は首を傾げながら、優しく柔らかい笑顔で中川に聞く
『僕、さっきまで中におったんであったかいですよ』
もう冷えそうだけれど、と、今度は包み込むように中川の冷えた手を、旭は握った
「んーん、足りへん」
彼はそんな旭の優しさに漬け込み、少し照れくさいながらも両腕を広げる
旭は、先程まで素っ気なかった彼とは真逆の、甘えたような行動に少し驚かされながらも
『ハグですか?』
と、照れて答えた
間違っていたら本当に恥ずかしいという考えで頭をいっぱいにしながらも
「そう、」
優しく答える中川の声に、旭の心配は吹き飛んでしまう
自分から行こうとはせず
「おいで」
親のような、飼い主のような、先輩である中川の開かれた心に飛び込むように
旭も思い切って勢い良く抱きついた
135人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:過眠 | 作成日時:2024年1月10日 21時