虚言3(短編集) (ページ13)

今日:731 hit、昨日:1,221 hit、合計:25,479 hit

Bs12(Bs11)...male ページ13

皆が自由に固まり、練習をしている者も指導を受けている者も
休憩がてら座り込み、雑談をしている者もいる

そんな中1人でいるのが寂しく、旭は誰か自分を混ぜてくれないかと、グラウンドを歩き回っていると

180cm未満の2人に挟まれる190cmほどの人間
なんとも目立つような身長差の3人を見つけ、旭はなんとなく近づいた

『何してはんの君たち』

後輩である山下に、同期の山本がピッチングを教えているようで
もう1人、後輩の宮城は捕手の役割をしていた

旭が近づいて声をかければ、３人はそれぞれの場所から立ち上がったり、道具を置いたり
旭を監督のようにして、そそくさと集まる

「山下が俺の変化球知りたいらしいから教えてた」

淡々としたそんな山本の言葉に

『いいやん！向上心のある後輩で』

なんでもポジティブに捉え、人を褒めることが得意な旭は、楽しげに答えた
自分から学ぼうとする人間はこれから成長するだろうし、彼もまだ20そこらなのだから、もう先には期待しかないだろうと考える
けれどもそんな旭とは反対に

「旭さん聞いてください、」

山下が、山本から一歩距離を置くように旭にゆっくりと近づいた後俯き、口を尖らせて答えた

『どうしたん？』

何も知らない子供のように純粋に、旭も山下のように口を尖らせ、首を傾げる

山下は自身のユニフォームの裾を、言いたいことがある幼児のように、グローブをつけていない右手でゆるりと掴んだ
やはり教えてもらったとしても、山下の中で何か納得がいかないのだろうかと、いくつかアドバイスの引き出しを探っていると

「教えてもらって、投げるんですけど、何回やっても違うって言われて…」

『うんうん、』

辿々しく紡ぐ山下の言葉一つ一つを優しく理解するように、旭は相槌を打つ

「もう、投げるなって」

山下が切なく呟くそれを聞き、旭は大きく目を見開いた
その後、ぎこちなく山本の方に目線を向け、冷めた目で見つめる

驚いたり笑顔になったり、コロコロと表情の変わるいつもの旭とは違い、彼の柔らかいながらも鋭い目で蔑んだように見つめられる山本は

「いや、俺そんなん言ってない」

自身も負けじと旭に訴えるように一歩近づく
そんなことを言っていたらそもそももう教えるのをやめていただろう
なぜ山下は先輩を的に回し、嘘をつくのか
けれども山本は、話を盛り嘘を吐く山下を叱るよりも先に、旭に嫌われないよう挽回することに必死だった