続 ページ2
飯食いに行こうと言うだけで、彼が元気になる様な様子もない
ただ彼が、今何が必要かを小林は聞いた
「なんか…欲しい?何が欲しい…?」
尊敬している先輩である小林のおろおろとした表情と不器用さに、旭は少し微笑ましくなるが
欲しいものも特にない
ただ自分を甘やかしてくれる人が必要だった
そんな彼は、数秒考えた後
『誠司さん、』
と、彼の目を見て口に出した
そんな旭の発言に
「俺ぇ?」
小林も素っ頓狂に返事をする
『はい、』
彼のこの言葉は、いつものおふざけだろうと
「何それ、告白か?」
真正面から伝えられることで感じる、自身の少しの恥ずかしさを隠すように、小林がカラカラと笑っても
彼は何も喋らずに、小林から目を逸らし、下を向く
彼を否定し、揶揄って誤魔化すことは
今だけは、禁忌だった
『ごめんッ、なさい、』
泣いているのかと聞きたくなる様な声で謝罪をし
椅子を引き、立ち上がる彼
「ごめんごめん、!」
まるで好きな子に嫌われたかの様な危機感で、小林は急いで旭の前まで移動し、両肩を押さえ、彼をまた、椅子に座らせた
小林の必死な行動に、旭も力無くまた、椅子に座る
「…甘やかそか?」
今まで見たことのない彼の表情や様子に、小林は甘やかさないではいられなくて
そんな小林の問いかけに、旭も頷いた
彼だけが椅子に座っている状態では不便だと
「俺の上座る?」
小林はたくさんの疑問と同時に、申し訳なさそうに彼の手を取った
小林の手を指先できゅっと握る旭を立ち上がらせ、自身が椅子に座る
そして、小林が椅子に座るまで立って待っていた旭を見ながら
小林は自身の太ももをとんとん、と叩いた
「ここおいで、こっち向いて座り」
そんな小林の言動に、旭も
『失礼します、』
律儀に一言言い、小林の足に座る様に跨った
スポーツ選手にはそぐわない程に身体の軽い彼が小林の上に跨っても
心地よい重さだとしか感じず
自身よりも一回り小さな華奢な身体を、守るように抱きしめ、さすり撫でた
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作者名:過眠 | 作成日時:2024年1月10日 21時