続 ページ50
顔と腹では大違いで
彼の白い腹部にあるものは、色は鮮やかでなくとも、微かに官能的に思えた
天使のキスと呼ばれているであろう、呼んでいいであろうこの痣を、佐々木は今、しっかりと認識し
自身の目元にキスをする彼を
彼の腹部にキスをする自身を無意識に想像する
なんて邪に塗れた、欲に塗れた妄想だろうか
彼が折角教えてくれたのだから、せめてもの思いで、佐々木は触れることのできる位置にある、旭の腹部に手を伸ばした
彼の痣があるであろう位置を、彼の服の上から撫でる
服の上から、指先に、彼の皮膚が感じられた
何の力も入れていないただの腹部で
だが、佐々木が恥ずかしさをなかったことにする様に、手を離した時
旭は自身から離れた佐々木の手に、引き止める様に触れる
『触りたい？』
まるで、捕まえたとでもいう様に、旭はにこにことし、佐々木の手に触れたまま、彼と目を合わせる
佐々木も、旭の手が触れている自分自身の手を引くことはなかった
触ってしまったら、またも感情が邪険な方向に乱れてしまいそうで
見た目とは違って積極的な彼に、飲み込まれてしまいそうで
「いや、いい」
と、あっさりと否定する
だが佐々木のその返事の冷たさを掻い潜り
『朗希なら別に良いけどな、』
と小さな声で呟く彼の声が
しっかりと耳に入っていながらも
佐々木は入っていないふりをする
そして、それを忘れるように、軽く咳払いをした
いつか触れる時が来たらいいと思うが
今じゃないと直感する
「練習、戻るね」
まだ口を結び拗ねているような彼を一瞥し、佐々木は旭の横を通り過ぎた
そして、旭が指を指した、痣があるであろう自身の目元を触る
自分が気づく前に
彼が気づいてくれて嬉しかったことを噛み締める
目元の痣が生まれつきであり、恐らくこれからもずっと消えることのない事実に、佐々木は感謝した
そもそもこんな話を自分にする時点で、彼は自分には、友情とは違う何かを抱えているのではと、自惚れてしまう
先ほどの発言だって、自惚れやすい男なら、誰でも勘違いするだろう
彼が自分から腹部のあざを教えたのも、見せたのも
自身が初めてだったらいいなと想像しながら
頭の中をまた、練習や試合のことで埋め尽くした
彼の白い腹部に浮かぶ薄い痣や、自惚れてしまう様な彼の発言、そして、汗で濡れる彼の焼けた手の甲だって
先ほどの光景のひとつひとつは、いつになっても忘れることができない気がした。
＿＿＿＿
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 239人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
過眠(プロフ) - 凛さん» ぎゃ❗️ありがとうございます❗️長編にしようと思っているのでよければ楽しみにしていてください❣️ (11月27日 22時) (
レス) id: 4e02012d1f (このIDを非表示/違反報告)
凛 - Bs6＆Bs67のお話狂おしい程好きです! (11月26日 13時) (レス) id: c2c2ad41a8 (このIDを非表示/違反報告)
過眠(プロフ) - りりりさん» コメントありがとうございます😭❣️もしかしたらいつか書くかもしれません、🤭応援ありがとうございます励みになります😢❣️ (11月22日 9時) (レス) id: 4e02012d1f (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 6さんと67さんのお話だけでもう作品作っていただきたいくらい好きです！応援してます！ (11月21日 19時) (レス) @page14 id: 724b4ec6c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：過眠 | 作成日時：2023年11月3日 11時
