続 ページ42
山岡は擽ったいような些細な刺激で、無意識に腹に力が入る
『皆さんやっぱり力が入るんでしょうか…彼らは鍛えていると思いますし』
『刃を入れる直前には、無意識に腹筋に力が入って、刃が立てにくいんでしょうね、』
淡々と自身の想像力を膨らませる旭に
山岡は少し恐怖と奇妙さを感じる
そもそも彼は出会った時から奇妙だった
礼儀さえあれど、距離を詰めるのがとてつもなく上手かった
本当に比喩でもなく、懐に潜り込むように
先輩にも後輩にも、同期にさえも擦り寄る
そんな時はいつも口角をあげ、唇はほとんど見えなくなるほどに薄く閉じられていた
「鬱陶しい、」
そう言いながら、山岡は自身の両腕で腹を隠すように庇う
関西人である山岡は、旭の艶めかしくゆったりな標準語が堪らなく鬱陶しかった
忙しなく喋り詰める彼と違い
語尾だけが消え掛けるような抑揚がついたその喋り方は
野球以外から価値観と知識を得ることが得意な、彼特有のものであると感じる
対戦相手はその喋り方や表情に翻弄され、彼から勝利を勝ち取ることができずにいるが
同じチームメイト、同じ投手である自分自身も
彼にメンタルと情緒を狂わされそうになる
けれどもこうして彼の特有のすり寄り方にやはり翻弄され
用事を伝えるためだけに来たのに、素直に彼の身体に収まり、座ってしまっていて
『腹部にも大動脈ってあるらしいんですけど』『そこに届かせるなんて、到底無理らしいですよ』
旭はまた、独り言のように呟いた
『だから次は、首の頸動脈を切るんです、自分でね』
旭の落ち着いた声は山岡の耳に、脳に、直接入り込んでいく
考えたくなくても考えてしまうほどに、彼の語りは鮮明に山岡の脳内に反映された
『自分の首なら走行が早いでしょう』
『他の人間が切り落とす場合もありますけど…』
旭は山岡の首を、覗き込むように凝視する
『ここら辺かなぁ』
なんて独り言を言いながら、山岡の首筋を指先でなぞった
繊細で敏感な首筋の血管を、伝うようになぞられ、全身に鳥肌が立つ
自身の首筋に触れる彼の左手をどけようとした時
旭は右手で、山岡の下着に手を掛けた
少し覗くように、下着に指を引っ掛ける
「ぅわｯ、」
旭の突発的な行動に身の危険を感じ、すぐさま山岡は旭の体から離れ、向き直るようにし、顔を睨んだ
けれども旭は
『ごめんなさぁい、』
と、降参したように両手を上げる
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過眠(プロフ) - 凛さん» ぎゃ❗️ありがとうございます❗️長編にしようと思っているのでよければ楽しみにしていてください❣️ (11月27日 22時) (
レス) id: 4e02012d1f (このIDを非表示/違反報告)
凛 - Bs6＆Bs67のお話狂おしい程好きです! (11月26日 13時) (レス) id: c2c2ad41a8 (このIDを非表示/違反報告)
過眠(プロフ) - りりりさん» コメントありがとうございます😭❣️もしかしたらいつか書くかもしれません、🤭応援ありがとうございます励みになります😢❣️ (11月22日 9時) (レス) id: 4e02012d1f (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 6さんと67さんのお話だけでもう作品作っていただきたいくらい好きです！応援してます！ (11月21日 19時) (レス) @page14 id: 724b4ec6c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：過眠 | 作成日時：2023年11月3日 11時
