悪魔の子 (ページ21) - 小説/夢小説

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demon20 ページ21

そう。何故母様が来たことで察することが出来なかったのか不思議に思うほど、母様の言葉に不思議は無かった。

──また会いに行くから…

そう云って別れた私達。母様が迎えに来るのは不思議なことじゃない。

でも、なんだか、今はまだ帰りたくないと、私の心が訴える。

『母様…私…。』

「あら、どうしたのA？早くご挨拶なさいな。」

『私っ…帰りたく、ない。』

云った。云えた。

恐る恐る母様を見ると目を丸くしてこちらを見ていた。

矢張り我儘だっただろうか。

無理矢理引っ張られてでも連れていかれるのだろうか。

「まあ。あの時(・・・)は泣いて、嫌だ、離れたくないと云っていたのに…どう云う心境の変化なのかしら？

…なんにせよ、貴女が成長したということなのかしらね…。」

『え、それって』

「ここに残っても良いわよ、A。この世界には可愛い子には旅をさせよと云う言葉もある様だし。郷に入っては郷に従え、ね。」

母様はあっさりと了承してくれた。

言葉のとおり、我が子の成長を心の底から喜んでいる様に、でも少し寂しそうに母様はまた微笑んだ。

「…私は貴女に母親らしいこと、何もしてあげられなかった…。

1回だけ会って、貴女を喜ばせてすぐに絶望に突き落とした…最低な母親。」

『…っ、それは違うわ！』

思わず大きな声が出た。あまりにも母様が自分を責めるから。

『確かに母様は私を喜ばせた後にすぐに絶望に突き落としたわ。

でもっ、母様はこうやって最初の約束を守って迎えに来てくれた！抱き締めてくれた！

…それにね、母様が私をこの世界に堕としてくれたお陰でこの世界を知れた！

あの時母様が云ってた、大切だと思える人も…出来た。

だからね、母様。私、母様を責めようとも、ましてや恨もうとも思ってないのよ…。』

母様はまた目を丸くして、涙を零した。

「A…っ。本当に、見ない間に成長したのね…。」

ずずっ、と鼻をすする音がして後ろを振り向くと、チュウヤと黒服達も涙を流していた。

『…えっ。貴方達も泣くの？』

「A様のお母様を思う気持ちに…感動致しました…。」

予想外過ぎる。母様だけじゃなくて彼らも泣くだなんて。

矢張り私は、大切な彼等を置いては帰れない。

ぽっと出の私を能力と努力で高く評価し、慕ってくれている。

私のことで涙を流してくれる。

こんな素敵な人達を置いていくなんて。

この世界に来て良かった。