58 . 病院 ページ9
涼介side
気がつくと、まっしろな部屋にいた。
さっきまでのだるさが嘘のように身体は軽いのに、
この部屋の無機質さと、未だ目を覚まさない君の姿を前に、何だか悲しい気持ちになる。
正直、"きゅうきゅうしゃ"という車に乗ってからのことは、あまりよく覚えていなくて。
ただ、涙のあとがくっきりと残っている君の頬を見ると、
僕がしたことは、決して許されることではない事がわかった。
痛い思いさせて、ごめんね…
大ちゃんの頭に、そっと手を置く。
いつも君がやってくれるみたいに。
こんなに小さかったっけ。
そう思わせるほど、君の寝顔は幼く見えた。
…と、ここで僕はようやく、重大なことに気づく。
そもそも、ここはどこなんだ…?
僕にインプットされている少なすぎる情報量では、到底答えを導き出すことは出来なかった。
そう言えば、さっきから左腕に違和感が…
…針?針が体に刺さっていていいのか?
怖くなって、部屋を飛び出した。
ここ…
この廊下の感じ、見覚えが…
病院だ。
ここは安心できる場所
いつの日か、君は僕にそう言った。
まぁ、少しすれば誰か来るだろう。
どこからか現れた睡魔に襲われ、僕は再びベッドに潜った。
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作者名:朔 | 作成日時:2020年2月1日 23時